キノコな生きざま

@kinokinoko

第1話プロローグ

「あー、疲れた…帰って一杯やりながらログインしないとなー」


スーパーで夕飯の材料を買った袋を片手に、夜の道を歩きながら呟くスーツ姿の男。


金曜の夜ということで、連休は家に引きこもりつつゲーム三昧という妄想をしつつ帰路についている最中のようだ。


自宅まで残りわずかというところで、国道の大きな道路の信号に捕まってしまったが、呑気に待っていると、後ろから家族連れがやってくる。


家族連れは夕飯を食べてきたようで、あれ美味しかった、また行きたいなど、賑やかな光景だ。


男は羨ましいような、微笑ましいような光景を見ながら信号が切り替わるのを待っていた。


信号が切り替わり、帰宅しようと早足で信号を渡っていると、何か違和感を感じ横に目をやると、トラックが孟スピードで走って来ているのが見える。


危なっかしい運転だなと思いトラックを見ていると、ライトで逆光になっていて見にくいが、運転手がハンドルに突っ伏しているのが見てとれた。


危ないと思い信号を渡りきろうとした時、後ろから笑い声が聞こえた。


振り向くと一家はトラックに気付いていないようで、子供たちが両親に楽しそうにまとわりついて、話ながら歩いていた。


そしてトラックは依然としてスピードを落とさぬまま走っている。


男は直感的に声をかけては間に合わないと判断し荷物を投げ捨てて、一家に駆け寄る。


男は一家の両親を突き飛ばし、子供を二人を抱えようとする。


子供の父親は、いきなり突き飛ばしてきた男が自分の子供を抱えようとしていることに恐怖し、男に迫ろうと前に立ち塞がる様に立ち上がる。


男はすぐに子供達を父親の方に投げた。


その瞬間、体に強い衝撃を受け意識が遠く無くなる。


それまでの僅かな瞬間だが、一家は無事な様で、子ともを受け止めた夫婦が驚きの表情をしながらこちらを見ていた。


良かった…間に合った…と安堵して、男の意識は黒く染まる。




これが、時の最後の記憶となった。


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