ダラけ男子高生はお嬢を護る

中村 鐘

第1話始まりのノック

「・・・起きて・・・・・・起きて。」

そう言って扉の向こう側からノックする音が聞こえた。

「・・・ん」

俺は眠い目をゴシゴシこすりながらベッドの脇に置かれた目覚まし時計に目を移す。そこにはまだ六時にもなっていない短針があった。

目覚まし時計にセットした時間にもなっていないのに起こされた俺は内心むすっとしながら再び掛け布団の中に潜る。

ちなみに、俺はむやみに起こされるのが嫌いだ。

また、ノックと共に「起きて・・・起きて・・・」と、声が聞こえてくる。

俺は聞こえないふりをしながらさらに掛け布団に包まる。

すると、また「起きて」と声がした。

決して起きるものかと、決めた俺は無視をした次の瞬間

”ドゴン!”という音と

「いいから起きろって言ってんだよ!!」

そう言って怒鳴り込んできたのは真っ白な肌をした質のいい黒髪を短く切った女性、もとい女子高生だった。

「おい居候!お前いつまで寝てんだ!今日は始業式だって言っただろ。」

「おいおい・・・なんだよ玲音、まだこんな時間だろ?」

そう言ってイヤイヤ上体を起こす。人と話すとき寝ながら話すほど礼儀に反することをする俺じゃない。

「まだ?、じゃない今日からお前はお嬢の専属の護衛としての仕事があるっていうのに・・・」

言っているうちにどんどんフェーズダウンしていく彼女。逆に肩が震えてきていた。

「おい・・・だい・・・」

と言いかけた瞬間

「うるさい!余計な気遣いは受け取らん!なんで・・・お前が・・・お前なんかがあの人の護衛なんかできるんだできるのならば私が・・・私がやるのに!」

そう言って勢いに任せて片手に持っていた紙袋を投げてきた。

ど真ん中のストレートでしっかり胸のあたりに当たった。

「じゃ、私行くから。食堂で待ってるから早くそれに着替えてきて。」

そう足早に舌をまくしたてながら部屋を出て行った。

俺は胸元にある紙袋の中を広げて着替えようと起き上がった。

こうして憂鬱な1日が始まる。







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ダラけ男子高生はお嬢を護る 中村 鐘 @nakamurasyou

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