ふたつの道

勝利だギューちゃん

第1話

「ここはどこなんだ?」

気がついたら、僕は見た事もない道を歩いていた。

どうやって紛れ込んだのかがわからない。

記憶から、こぼれおちている。


でも、初めてである事には間違いない。

なのに・・・

何故か、懐かしい気もする。


「デジャブか?まさかな・・・」

そう思いつつも、歩くことにした。


立ち止まっていても解決しない。

本能がそう教える。


「久しぶりだね」

えっ

どこからか、女の子の声がした。


「君は一体」

「しっ、そのままで聞いて」

女の子は声をかけてくる。


「君は心のなかで答えるだけでいいわ」

「でも」

「大丈夫、私には伝わるから」

僕は女の子の言うとおりにすることにした。


「ねえ、覚えてない」

「なにが?」

「君は、前にもここに来た事があるんだよ」

「もしかして、前世の話?」

「ううん、現世だよ」

わからなくなった。


「前っていつ。子供の頃?」

物心つく前なら、覚えていなくても、不思議はない。

「ううん、かなり大きくなってから」

「じぁあ、どうして覚えてないの?」

「それは、君自身が封印したから」

「封印?」

人間というのは、本能として、記憶を消そうとする傾向がある。

しかし、嫌な事は忘れられないものだ・・・


「教えてほしい?」

「うん」

「わかったわ。次の角を右に曲がってみて、そしたらわかるから」

「待って、君は一体だれ?」

「今は私の言うとおりにして、後で教えてあげる」

女の子の言うとおりに、僕は次の角を右に曲がった。


すると、そこには、

「やあ、久しぶり」

さっきの女の子がいた。


もちろん、外見は初めて見る。

でも、声でわかった。


彼女を見た瞬間に思い出した。

「そういうことか」


「君がさっきまでいた道は、君がこの間まで歩いていた道。

でも、君はその道を捨てた。

そして自分に嘘をついた。忘れようとした」

人間は夢を完全には捨てきれない。必ず未練が残る。


神はきまぐれで、たまにその道に連れ戻す。


「どうする?元の道に戻る?

それとも、今の道を進む?」

答えるまでもなかった。


「戻るよ。前の道に、そして歩き続ける」

女の子は微笑んだ。


「うん、男の子はそうでなくっちゃ」

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ふたつの道 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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