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友人の招待状は、俺のもう一人の友人と結婚する。というものだった。そして、都合が良ければ結婚式に来てくれないか、と。
――おめでたいこと。友人も、相手のもう一人の友人も、俺の小さいころからの友人である。
結婚式の招待状に、出席に丸を付けようとして、手が止まった。
「……痣、」
紙に手を添えていた、左手の甲が見えたからだ。
数年前に出来ていたこの痣は、最初はただの丸い痣だった。それが、いつしか形を変えて複雑な模様の――しいて言えば、蓮の花を真上から見たような形の――痣になっている。もはや、痣ではない。タトゥーと言っていいくらいだ。
「気にする必要も、無いか」
――タトゥーなんて、今時誰でも入れている。
そう思って俺はペンを滑らせた。
「これでよし」
歩いて数分の所にあるポストに投函しようと、着替えて外へ出ると見知った顔が俺の家の扉の前にあった。どうやら、こちらを覗いているようだが俺は構わず外へと扉を開ける。
案の定、見知った顔の男は頭を扉にぶつけたようで、その場で蹲っていた。
「痛ぇ……」
「そんなところで何してるんだ?」
男は、恨めしそうに俺を見ている。そんな男にため息をつきつつ、手を貸して男を立ち上がらせた。
「で、こんなところで何してるんだ?」
「悠夜(ユウヤ)に、聞きたいことがあって……」
「ほう、それは俺の益になることか?」
俺がそう言うと、男は首を縦に強く振った。
「あるある!絶対ある!!友梨佳(ユリカ)ちゃん、結婚するんだって!!?」
「そうらしいな」
「しかも、相手、蒼(ソウ)とだって!!?」
……俺は男の頭を一発拳骨を入れてやった。
「俺に、益はないな」
蒼も、友梨佳も、どちらも俺の大切な友人で、今度結婚することになった新郎新婦である。
益があると言えば、あるが、あると言った場合、この男が調子に乗るので、そこはあえて黙っておく。
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