第13話「剪定」
その梓は、会が
――目立つ必要があるのでしょうね。
ルゥウシェたちとレバイン陣営の戦いだけならばまだしも、また
――舞台という名前も、よくできています。
本質が
――故に歓迎される能力とは、より酷く人体を損壊させるもの。
梓から見て、無駄が多いと見えてしまう《導》を操る者が多いのは、そのせいだ。
ならば――、
「伊達や酔狂。全て、そう」
梓はそう結論づけていた。高度に体系化された技術、体術は、その「高度に体系化された」という言葉が示す通り、無駄が削ぎ落とされた状態となる。それは派手さを失う事でもあるから、この舞台には不向きとなってしまう。
ルゥウシェ、バッシュ、
それを考えれば、衣装の重要性は梓の思っている通り、伊達や酔狂になる。
「より目立ち、より派手……ですね」
防御機能など二の次、三の次であり、そもそも《導》に対して防御力を有するとなれば、それ同じく《導》によって作られた障壁や結界だけだ。
安土が用意した衣装は、ある程度の防御力を有しているというが、それも紙一重で致命傷にならない程度。《方》を宿した衣類かも知れないが、《導》で作られた衣類ではない。
「まぁ――」
梓はフッと笑みを浮かべ――、
「
自身の持つ《導》を発動させた。
些か笑ってしまうのは、矢矯と弓削の戦いを見ていた際、切り札を持たない弓削にも、切り札を使ってしまった矢矯にも嘲笑を向けてしまったにも関わらず、梓にとって切り札であるNegativeCorridorを使ってしまっている事に対してだった。
――私も未熟ですね。
それは雑念というのかも知れないが、梓の《導》を邪魔するものではなかった。
「
回廊から呼び出されるのは、会の衣装だ。
足下は黒のカルソンパンツとパンプス。ベルトはやや大きめのバックルが目立つものを使う。
リブ編みのキャミソールは白。
その上から、着物をガウンコート風にリメイクしたアウターを羽織る。ワイドシルエットにするのは、モノトーンのインナーを目立たせるためでもある。
片目が見えない会であるから、額から鼻までを覆う仮面を用意し、その仮面は人を食ったようなデザインにした。
「
それは驚かせるつもりのない声であったが、梓でなければ横から射るはずのない相手の声がすれば飛び退いていたかも知れない。
「
梓の口調には、乙矢と面識がある事が伺える。
乙矢は軽く肩を竦めると、梓が《導》で呼び出した衣装を一瞥し、
「その《導》……健在なのね」
この衣装は、全て《導》で作り出した――即ち、《導》や《方》に対し、防御力を有している。
「はい」
おかげさまでという言葉が出かけたが、梓は飲み込んだ。
――何年も会っていない相手に、お陰様もないものですね。
梓が思う通り、乙矢も期待していない。
「舞台に上がらされると聞いて。ベクターさんと弓削さんの舞台に乱入したって?}
乙矢が梓の元へ来た
「はい」
それに対しても、梓の返事は短い。魔法使いの異名を取る乙矢に、どうやって来たかを聞くのは愚問というものであるし、何をしに来たのかも大体、分かる。
「相手は、前の舞台で私たちと戦った、
しかし、この言葉に対しては、梓も「はい」とは答えなかった。
「いいえ。
以前、小川にもいった事があるのだが、梓は六家二十三波ではなく五家二十二派だという。
「どちらでもいい」
乙矢は無感動な表情のまま、梓に近づいた。
「
「鳥打くん……ああ」
梓も憶えている。
「どうせ、あなたが上がる気になっているのなら、舞台の勝負は決したも同然なんでしょう?」
乙矢が益々、近くなる。旧知の仲である二人だ。互いの事は知っていた。梓のNegativeCorridorだけでなく、その素性も、
「あのね――」
手を伸ばせば鼻でも摘まめそうな距離になって初めて、乙矢の目に剣呑な光が浮かんだ。
「
「はい」
梓の返事は、今度も二文字だけではない。
「愛してますから」
それをどう受け止めるかは、聞いた者によるのだろう。乙矢は深い意味までは訊ねない。
「それと同じだけのものを、私は真弓ちゃんに懐いてる。その真弓ちゃんは、今度こそ絶対に鳥打くんを絶対に傷つけさせないっていうわ」
文字通り目と鼻の先――唇が接触するくらいの距離で、乙矢は梓の目へ鋭い視線を向けていた。
「鳥打くんだけは降ろしてもらうわ」
告げたい事はそれだ。
「……それは私にいわれましても……」
はぐらかすつもりはなかった梓であるが、乙矢は相手の胸元へ腕を伸ばしていた。
「痛いです」
顔を歪めつつも、梓は笑った。
「はぐらかすつもりはなかったんですよ。人員は世話人の領分だといいたかっただけで」
「一人で全滅させる事すらできるんでしょう? 一人でも」
乙矢の声がトーンを落としていく。
舞台に上がるメンバーは、
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