第3話「安土の鑑定」
ルゥウシェが
「あと二人分、こちらに余裕があります」
タブレット端末に視線を落としたまま、
「何に使うのか知りませんが、今まで殺されていったルゥウシェ、
だから二人分、
「この前の団体戦か?」
口を挟んだ
その理由は、安土が持ってきた話もそうだが、集まっているのが孝介と仁和の自宅である事が大きいだろう。
「すみません」
話を持ってきた事と集まる場所にしてしまった事、双方の意味を持たせて安土が謝る。
「でも人数が集まれる広い家というと、
「申し訳――」
原因者でもある
「ごめんなさい。的場くんにも迷惑をかけてしまって」
直接、いわれずとも、梓よりも自分の方が原因者だと自覚している。小川が梓に目を付けたのは、
頭を下げたまま、会は自分の周囲に紙面を巡らせていた。
顔を上げずとも、周囲にいるのが何人かは分かる。
家主である
今回、激突する事になった
弓削の教え子である
彼らを集め、また小川に最大の屈辱を与えた――与え続けている安土。
「驚いただけで、別に迷惑には感じてないわよ」
会の肩に手を遣った仁和は、顔を上げてといった。
「友達……だしな」
安土に対しては仏頂面をする孝介も、会に対してはできない。孝介も人との距離を測りづらい性格であり、同じイラスト教室に通う同級生というだけの間柄に過ぎない会に対し、憎からず思う感情があった。
「どうせ小川から狙われているのは、月さんのせいばかりにはできませんからね」
会と梓が舞台に上げられると聞いて、小川の誘いに乗ってしまったのだから弓削も会に対しては柔和だ。
孝介と弓削を挟めば、この場にいる誰もが無関係とはいえないからだ、という以外の理由もある。
――それだけではないのですけどね。
安土は、自分が世話人として関わっているから、というだけが理由ではなかった。
――
会の祖母は陽の祖父である
他ならぬ陽の身内なのだから。
「その
保証のある話ではないため、神名も首を傾げていた。一度は勝っているのだから二度目も勝てるとは限らないし、また無傷で完勝できるとしても、殺し合いの舞台に喜び勇んで上りたいという感覚はない。
これしかないと追い詰められたという理由はあるが、自分たちで望んで舞台に上った孝介と仁和も、積極的に舞台へ上がる気はない。
「一度、勝てたから二度目も勝てるとは限りませんが、一度でも敗れれば二度目は慎重になりますし、三度目となれば余計です」
どこまでいっても推測に過ぎず、保証にはならないのだが、安土がいえば説得力を感じてしまうのが、このメンバーだ。
特に小川が煮え湯を飲まされたのは一度や二度ではない。
万全を期したと思っていた7対9の決戦でも、矢矯に弓削をぶつけるという今回の一戦も、結果として小川は失敗した。
「時間があろうとなかろうと、月さんの《導》を伸ばしていかなければなりません」
安土の目が会へと向けられた。
「え……? 《導》ですか?」
思わず仁和が聞き返してしまうように、この場に《導》が使える者はいない。そもそも自分たちの陣営――といっていいのか悪いのかは分からないが、
「はい。《導》です」
安土は頷き、
「鬼家月派の《導》は確か、代理戦闘でしたよね?」
確認するように訊ねられた会は、「はい」と頷く。
「
単語のみ短くいった会の背後に、ぼんやりとした像が結ばれた。
鬼神と呼ばれる、月家の《導》によって形作られた存在だ。
「自分の意志通りに動く存在に戦わせる……」
知っていて尚、安土は唸った。聡子に付き従うペテルとカミーラは別種の《導》であるが、どうしても思い出さずにはいられなかった。
月家の血縁を感じる安土は、気を取り直すように首を横に振った。常に最適な教師役を見つけてきた安土である。今も《導》が使えずとも、最適な教師役を見つけている。
「この《導》を伸ばしていくには、弓削さん。あなたにお願いしたいのです」
種類がまるで違う弓削の《方》と会の《導》であるが、違うはずの二つだが、安土は親和性を見出していた。
「俺?」
弓削も呆気にとられてしまうのだが、通級のタイミングは矢矯によって遮られてしまう。
「なら、舞台が整ったら連絡してください」
ぼんやりとした顔をしていた矢矯は、タンッと軽く床を鳴らして立ち上がると、上着を掴んで背を向けた。
「俺は、メイさんの仇が討てれば、何だって構いませんよ」
この中で唯一、積極的に舞台へ上がる気があるのが矢矯だ。
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