第2話「新たな蠢動」
「知ってるよ」
カラオケボックスのソファーに身体を沈め、テーブルに足を掛けた男はフンと強く鼻を鳴らした。ダメージ加工したジーンズとTシャツという姿の男は、口調も相まって上品には見えなかった。
「
結局、その舞台では小川側で勝利を収めたのは、バッシュと
あの舞台に参加した百識では、ルゥウシェ、アヤ、
4名が揃って新家に敗れたという話は、狭い世界であるが故に高速で広がっていた。
「目新しい情報じゃないな」
男は背もたれに全体重を掛け、視線を斜めにして見返した。
「実は、
視線の先にいるのは小柄な少女。背が低くなで肩の少女は、体格からして中学生くらいだろうか。
貧相という言葉そのままの少女はメガネをかけた顔を男へ向けながら、手にしているゲーム機のブラウザを立ち上げて見せた。
映されているのは
「コイツも、この舞台にいたヤツだな」
男は身を乗り出して、ゲーム機に表示されている弓削の顔を見遣った。
「いよいよ落ち目か」
嘲笑している男も、舞台に上がっている百識だ。
そして、こんな態度を取っているのだから、六家二十三派ではない。
「けど、もう一つ、大事な事があるの」
少女はゲーム機を自分の方へ向け、ブラウザを操作する。ネットの閲覧やファイル管理を主として作られていないためスムーズな操作とはいえないが、自分のタブレットやスマートフォンを持っていないのだから仕方がない。
「この
「あん?」
もう一度、ゲーム機を見せると、男は鬱陶しそうに立ち上がった。
「こいつが何だ?
聡子が医療の《導》を使える事は、今も情報ハイウェイには乗っていなかった。
だが聡子の情報で価値を持ち始めたのは、医療の《導》が使える事でも、山家本筈派の血を引いている事でもない。
「この子、父親が新家月派の百識」
「何!?」
男は思わず少女からゲーム機を取り上げた。
そこには聡子の母親に
「月……鬼家月派じゃない方か……」
男が知っているのは
「新家のヒロイン――カッコ笑いって付くヒロインに、六家二十三派の女が負けたっていうのが、落ち目っていうには余りにも酷い、って思えるはず」
少女の言いたい事は続く。
「それと、その舞台には上がってないけど、一人、武器の情報をくれた人がいる」
そういった少女へと、男は「よくやった」とゲーム機に投げ渡した。
「
男が少女の名前を呼んだ。
「はい」
「連中を集めろ」
拳で掌をパンッと鳴らし、ソファへ腰を下ろした。
男はレバインと名乗り、舞台に上がる百識のチームを決定している。男が中心になるから、チームの人員は新家のみ。
「リベロンだ」
まず来たのはサブリーダー扱いの男。レバインと同程度の身長、体格の男は、レバインと同じく偽名だと分かり易い名を名乗っていた。
「全員、連絡がついたぞ」
リベロンは差し上げた手の人差し指だけを動かし、パーティルームに入ってくるように指示する。
「
続いて入ってきたのは、短髪をアップし、アシンメトリーに調えた男。偽名であるかどうか判断できない名前を名乗っているのは、流石にレバインにせよリベロンにせよ、あからさますぎると思っているからか。
「
次も男。ライダースジャケットとジーンズ姿は、車かバイクを弄っているように思わせられるヤレ具合だった。こちらも同じく偽名かどうかは判断しにくい。
「
6番目は女。狐目をイメージさせる吊り目を持った小柄な女で、部屋の隅に空島を見つけると、にっこり笑って手を振った。
「最後の一人が、情報を持ってきてくれた人だよ。新しい人」
空島が紹介する最後の男は、まだチームに所属していない。故に他の5名の視線も厳しいものになる。
最後の一人は――、
「
それは土師紀子と組んで
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