第43話「月華の下で我らは死なず――終局」
銀色の光に艶のように青や紫の光が混じるのは、アヤへと集められた
その6つの光と、ハロウィンが放つ無数のプラズマ。
「おい……おい!」
その光景に観客席が
光ひとつでも、上空で放ったBLACK goes the HADESと同等の威力があるのだろう。
それを無数に、しかも水平方向へ発射しようというのだから、これで色をなくさない観客はいない。
確かに
「バカ野郎! 止めさせろ!」
観客が口々に怒鳴る。スタンドに飛び込んでくる事は間違いないと感じさせられていた。
「もういい! そいつらの勝ちでいいだろう!」
勝敗を決定するのは観客のはずだ、というのだろうが、総意にはなり得ない。
「いいや、そんな奴ら負けだ! 今すぐ失せろ!」
何故ならば、全員が同じ事をいわないからだ。
今、
周囲にパニックが広がるばかりでは、審判役もどちらを勝利とするのか、それとも引き分けや無効にするのかの判断ができない。
――無効や引き分けなんて判断はできないでしょうね。
アヤの姿と《導》を見ながら、乙矢は軽く首を傾げた。小川は
そしてアヤは、
「行け!」
集束させた《導》を解き放つ。
五角形の頂点と中心から放たれる光芒と、随伴するように放たれるハロウィンのプラズマは人に向かって放つ規模ではない。
戦車砲か、それとも戦闘機が放つミサイルか、兎に角、人ではなく巨体と装甲を備えた兵器に放つ程の規模だった。
その光芒は死そのものだった。
対する乙矢も、回転の中心から赤く輝く球体を出現させる。
――
アヤの言葉は、
そして石井は孝介に下された。
それを繰り返した。
乙矢が放った赤い球がアヤのレーベンミーティアに飲み込まれたかと思った者が目を閉じたのは、次に来る破滅に対するせめてもの抵抗だった。
だが次に来たのは破滅ではなく、《導》の消滅!
「!?」
アヤは我が目を
爆音も閃光も何もなかったにも関わらず――いや、なかったからこそ、眼前で起こった《導》の消滅が信じられなかった。
高密度の《導》にぶつかれば、レーベンミーティアとて拡散してしまうから知れない。
だが、なかった事になってしまう事など有り得ない。
「有り得ない……」
呟く程度の声であったのに、特に静まりかえったスタジアムの中では、よく響いた。
だが乙矢にとって、これは不思議ではない。
「有り得ない事が存在しないのが、魔法よ」
乙矢が持つ力は、《導》や《方》ではなく、もっと根底にある源流に存在している。故に魔法としかいいようがなく、そこには法則性も規則性もない。
それぞれ違った属性を持たせた《導》を複数、放とうとも、どれだけ密度の高い、強力な《導》を発動させようとも、それらを全く無視して効果を発揮する。
それを聞いたアヤが、どういう顔をしていたかは乙矢も知らない。
ズルいといわれればそうだろう。
だが乙矢は、いわれる筋合いはないと思っている。
――戦い慣れてない私を相手にしてたんだから、こうなる前に何とでもなったはずよ。
乙矢の魔法は自身の倫理観と想像力によって、あらゆる現象を起こすという強みは、弱点でもある。
乙矢が自分ではできないと思っているような、思いつかなかった事は魔法でも不可能である点だ。弓削を迎えに行く、またスタジアムへ運んでくるのに時間をかけてしまった事が、まさにそれだった。
そこを突けば敗れていたのだから、乙矢は自分が
――同じくらいグダグダ。だけど、そっちが私よりも間抜けだったから、私の勝ち。
結論はそれだ。
「
槍を大剣2本へと変える。
「――
その2本の大剣で弾体を挟み込む。
「
回避できるかできないかではない、乙矢が当てるか外すかという猛スピードで飛来する弾体は、アヤを貫き、その意識を断った。
アヤが倒れても、暫く舞台は沈黙に包まれていたのだが、ややあって歓声が沸き起こった。
スタジアムを壊滅させようかという《導》を消滅させ、その上で張本人であるアヤを仕留めたのだ。
安土側の勝利を認める事を、誰が
終結――安土側の勝利。
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