第13話 メイドは僕に頭をポンポンされたい
*
翌朝――目を覚ますと隣には幸せそうに眠るメイの顔があった。
そんな可愛い顔を見ていたらなんだか抱きしめたくなった僕は、そっと抱きしめる。
「ん……んん……ごしゅじんさまぁ……えへへぇ……だいすきぃ……むにゃぁ……すぅー、すぅー……」
寝ぼけているのか、そんなことを言っている彼女を見ていたら自然と頬が緩んでしまうのがわかった。
(まったく、本当にかわいらしい子だな)
そう思いながらも幸せな気持ちでいっぱいになった僕は、しばらくの間こうしていようと決めるのだった。
*
それからしばらくして目を覚ました僕たちは朝食を食べ終えると冒険者ギルドに向かった。
理由はもちろん依頼を受けるためである。
今日も薬草採取の依頼を受けて森へと向かうことになるのだが、その前にやっておきたいことがあったのでそれをおこなうことにした。
というわけで、やって来たのは武器屋である。
そこでメイの武器を購入する。
メイのようなメイド服を着ていると、なかなか派手な装備をすることはできない。
だから、メイには短剣を買ってあげた。
これで少しは身を守れるはずだ。
次に防具屋で革製の鎧を購入した。
動きやすさを重視したものだ。
見た目はあまりよくないかもしれないけど、性能的には十分だと思うから問題はないはずだ。
あとはマントを購入したあと、道具屋で傷薬などの回復アイテムをいくつか購入した。
とりあえずこれくらいあれば大丈夫だろうと思う。
念のためポーションなんかもあった方がいいかもしれない。
ほかにも、いろいろと必要そうなものがあったので、それも一緒に買っておいた。
そんな買い物を終えて宿屋に戻ると荷物を置いて出かける準備をする。
そして準備を整えると早速、街を出るのだった。
*
街を出て森の中へと入ると目的のものを探し始めた。
まずはゴブリンを探すことから始めようと思う。
できれば数体ほど倒しておきたいところなんだよね。
でないといざという時に困るからさ。
それに魔石を手に入れることができればお金にもなるしね。
そんなわけで魔物を探して歩くこと数分――ようやく見つけたのは一体だけだったけど問題なく倒すことができた。
これで一安心だ。
でも油断はできないから気を緩めないようにしようと思う。
そうして、さらに森の奥へと進むことにした僕たちだったけど、途中で遭遇したスライムを倒すだけで終わってしまったため、その日は早めに切り上げることにしたのだった。
*
次の日もまた同じように森の中へと入って行くことになったんだけど、今日は昨日とは違う場所をめざすことにした。
なぜなら今日は別の種類の魔物を倒したいと思っているからである。
そのためにはまずどんな種類がいるのかわからないので探すところからはじめないといけないんだよね。
なので今日は一日かけて探してみることにしようと思うんだ。
もしかしたら今日中に見つけられるかもしれないからね。
そんなことを考えつつ森の中を歩いているとさっそく一匹目の魔物を発見した。
しかも運がいいことに向こうから近づいてきてくれたのである。
これは幸先がいい!
そんなことを思いながら近づいてくる魔物をジッと見つめる。
よし、こいつを倒してしまえば簡単にお金を稼ぐことができる。
ふふふ、こいつはいい獲物を見つけたなぁ~なんて考えているうちに目の前までやってきたので、僕は腰の鞘から剣を抜くと構えた。
すると相手は手に持っていた棍棒を振り上げるなり殴りかかってきた。
それを横に飛んで避けると今度はこちらから攻撃を仕掛けてみることにした。
狙いは首だ。
僕は勢いよく踏み込むと相手の首を目掛けて剣を振り下ろしたんだけど、動きが早かったためか避けられてしまった。
しかし、それでも攻撃を当てることはできたようで首から血を噴き出しているのが見えた。
どうやら傷を与えることに成功したらしい。
そのことにホッと胸を撫で下ろすと同時に次なる攻撃を繰り出した。
狙う場所は先ほど斬りつけた場所だ。
そこに向かってもう一度剣を振るうと確かな手ごたえを感じた。
それにより相手の動きが鈍ったのを見てここぞとばかりに攻め立てることにする。
――倒されろよ!
そんなふうに念じて、なんとか勝つことができたんだけど、なんというか危なかった。
一撃でも受けたらやられてしまいそうなくらいギリギリの戦いだった。
ふぅ、とにかく勝ててよかったよ。
そんなことを思いつつ一息ついていると背後から声がかけられた。
振り返ってみると、そこには笑顔のメイが立っていたのだ。
どうやら彼女は僕が心配で様子を見に来てくれたみたいだった。
そのことが嬉しくて思わず抱きしめてしまう。
すると最初は驚いていた彼女だけど、すぐに受け入れてくれたらしく僕の背中に手を回してきた。
そうしてしばらく抱き合った後、どちらからともなく離れると手を繋いで歩きだすのだった。
*
その後も何度か魔物と戦ったりしたけれど、特に苦戦することなく倒すことができた。
というのもやはり僕の体が優秀だったからだと言えるだろう。
なにせ身体能力が異常に高いおかげで大抵の攻撃を避けることができるし、受け止めることも容易いのだから当然と言えば当然のことなのかもしれない。
とはいえ攻撃を受ければ痛いものは痛いわけで……なので怪我をしないように気をつけながら戦うように心がけることにしたよ。
*
そんな調子で森の奥深くにまでやって来た僕たちは、少し休憩することにした。
さすがに疲れてきたからだ。
そういうわけで適当な場所に腰を下ろすと持ってきた食料を食べて腹を満たすことにした。
その後はのんびりと過ごしつつも周囲に気を配ることを怠らない。
いつ何が起きるかわからないからね……常に警戒だけはしておかないと危ないだろうと思ったのだ。
そんなことを考えていると不意に声をかけられる。
そちらを見るとメイがこちらを見つめていた。
どうやら話があるみたいだ。
どうしたのかと思って尋ねてみることにする。
すると彼女は言った。
「ご主人様、お話があります」
「うん、なに?」
「えっとですね……その……ぎゅっと、してくれませんか?」
それを聞いた僕は思わずキョトンとしてしまった。
いつも、していることなのにな……。
断る理由もなかったので言われた通りにすることにする。
そっと彼女の体を抱きしめるとそのまま優しく頭を撫でるのだった。
すると嬉しそうに微笑む彼女を見て僕も嬉しくなった。
「それと、わたしの頭をポンポンしてください」
「ぽんぽん?」
よくわからないけど、とりあえず、やってみることにした。
頭を撫でた後で、もう片方の手を頭に添え、軽く触れて優しく叩いた。
するとメイは気持ちよさそうに目を細めていた。
そんな彼女を見ていると心が安らいでいくのを感じた。
それはとても不思議な感覚だったように思う。
なんだかずっとこうしていたいと思ってしまうほどに心地のよいものだったのだ。
それからしばらくの間、僕たちはお互いに見つめ合っていた。
その間も決して視線を逸らすことはなかったのである。
やがて満足したのかメイの方から離れていくと恥ずかしそうにしながら言うのだった。
「……ありがとうございます、もう大丈夫です」
そう言った彼女の顔はとても赤かったけど、それが恥ずかしいからなのか、それとも別の理由からなのかわからなかったけど、追及することはやめておくことにした。
「そっか、ならよかったよ」
そう言って笑いかけると彼女も笑い返してくれた。
そして僕たちはまた歩き出すと、目的の場所を目指して移動を再開するのだった。
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