その5

と、話を戻して、口ごもったラディスローは、やがて意を決して語り始めた。

「……実はですね、ゲストの方のお一人が、当屋敷に勤めているメイドに、まあ、乱暴をした訳です」

「まあ」

「それで、さらにですね、そのゲスト様が、別のゲストのネックレスを盗んだということが、発覚しまして」

「ええ、そんなことがあったの!!」

と、唯がびっくりした口調と表情をする。

 グレアム夫人は、口をハンカチで押さえながら

「でも、なぜ私たちがここで待ち続けなきゃいけないのかしら?」

と、問うた。

「ええ、それなんですが、そのゲスト様があちらこちらに逃げ回っているようなのです。」

「ようなのです、ということは逃げたと決まった訳ではないんですか?」

「そのとおりです。

 が、実際ゲスト様が居られないのです。

 ゲスト様が成した所業を見て考えてみる限り、逃げたというのが、妥当な推測だと思われます」

「なるほどね」

 と、グレアム夫人はうなずいた。

 つまり、パーマストン・パークの中を、えたいの知れないそこつ者だが凶悪な犯罪者がうろついているので、いざという時に逃げやすいように、玄関ホールに居なさい、ということらしいと、グレアム夫人と唯はなんとなく思った。

「以上のために、グレアム夫人、貴女をここに留め置いています。

 ご迷惑をお掛けしますが、もう少しお待ちくださいませ」

「わかったわ。でも……」

 と、グレアム夫人は、唯を指差して

「彼女も連れていきなさい。

 おてつだいくらいならば出来ますのよ」

と、言った。

「しかし……」

「自分の身は自分で守れます」

「……わかりました。

 確かに、人手か足りませんので、お力をお借りします」

 と、ラディスローは嘆息しながら、言った。

「よろしいのですか、ご主人様!」

「ええ、どうせ手持ち無沙汰で、暇だったのでしょう?」

「そうです、そうです。

 やった~!!」

 唯は、グレアム夫人のとハイタッチするほど、喜んだ。

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