その4

 さて、ラディスローが言いよどんでいる間に、いくつか説明を差し挟んでおく。

 まず、侍女について。

 侍女とはメイドの一種で、主人に専従してるものを指す。

 創作物に出てくるメイドで、主人のそばにいるのは、これにあたる(最近の例で言うと、コードギアスの篠崎咲世子、鉄血のオルフェンズのフミタン・アドモス)。

 その役目は、主人、この場合はグレアム夫人の身の回りの世話をすることである。

 例えば、衣服をはじめとした荷物の管理、着替えの手伝い、先に出ていた小型車の手配といったことは、侍女である唯の仕事であった。

 服装は、通常思うメイドの格好ではなく、主人であるグレアム夫人の古着をもらって、それを着ている。

 往々にして、主人と侍女の関係は複雑で、グレアム夫人と唯も忠義を尽くすというよりは、友人のような関係性である。

 次に、フットマンについて。

 フットマンとは、いわゆる執事の下で、本当にありとあらゆる仕事をこなす役職である。

 ファースト、セカンド、サードにグレードが別れていて、さらに執事や侍女の下にいるスチュワーズ・ルーム・フットマンや、子供の世話をするスクールルーム・フットマンといった派生の役職があった。

 ラディスローは、黒い上着にベスト、白いシャツに蝶ネクタイをつけている。

 そのため、執事やヴァレットと間違えられやすいが、彼の地位はファーストフットマンだ。

 彼の役目は、主人や上司のいない、パーマストン・ホールの管理である。

 つまり、グレアム夫人のように、このパーマストン・ホールを訪れたり、部屋を借りた、あるいは泊まるといった時に、一切のトラブルを起こさせず、極めて平穏に過ごせるように万全を期するのが、彼の仕事ということである。

 しかし、ある映画の台詞ではないが、人間に限らず完璧というものは存在しないものだ。

 例えば今、このパーマストン・ホールでおこっていることも、それを証明しているだろう。

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