その3
「まあ、なんでこんなお屋敷なのに、人っ子一人いないのかしら?」
「そうねえ、確かに出迎えすらないのは、おかしいわね」
と、二人は広大であるのに無人な玄関ホールに入って不思議に思ったことを言う。
数分後、黒のトラウザー(長ズボン)に、ドレスコートを着た猫頭があらわれた。
侍女は驚いた。それというのも、彼女の主人であるグレアム夫人のように、猫と呼ばれる種族と人間のハーフである証である人間としての耳とは別に、猫耳があるという人はよく見かけたが、頭全体が猫まんまという人間を見たのが、初めてだったのだ。
「ご迷惑をおかけましました。
私は、ガルド様からパーマストン・パークの留守を任されている、フットマンのラディスローと申します、お客様」
「私はグレアム、こちらのニホンジンは羽川唯という私の侍女です」
「よろしくお願いします」
と、唯はペコリとラディスローという猫男に、お辞儀をした。
「グレアム様、失礼ながら、もうしばらくここでお待ちになってもらえませんでしょうか?」
「あら、なぜかしら?」
「実は、現在、当屋敷では問題が発生していまして……」
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