パーマストン・パークの住民たち

その1

 その小さな事件が起こった年のニューラグーン市は、異常気象の影響からか、恐ろしく肌寒かった。

 最高気温が25度を越えること自体まれで、いわゆる真夏日などまず越えることはなかったのである。

 天気にあわせて人も行動が異常になったのか、その年はニューラグーン市で大小さまざまな事件が起こっている。

 いくつか挙げると

『ニューラグーン市長、長年にわたって行われていた贈収賄疑惑で辞任』

『街の名物おじさん、またの名をニューラグーン皇帝氏登場』

『動物園に、ナンキョクグマのタータンが来た!』

 といった具合にである。


 さて、ニューラグーン市の郊外には元々貴族や一代で財をなした成金の別荘が点在しているのだが、その中にパーマストン・パークというお屋敷があった。

 元々は、チャーモンド家という旧家の別荘だったのだが、現在ではその親戚筋のガルドというお大尽が買い取って、ニューラグーンに来る際の別宅やゲストハウスとして使っている。

 グレアム夫人とその新人侍女がパーマストン・パークに来訪したのは、そんな肌寒い夏のことであった。

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