その3

 「ふうん、今日はそんなことがあったんですか。大変っスね」

 フクちゃんが、パソコンとにらめっこしながら、言う。

「そんな他人事みたいに言わんくても、良いじゃないよ。ボクと君の仲じゃないですか」

「そんなこと言ってもやさしくする訳ないじゃないですよ。ビジネスパートナーなんだから、そのくらいの間柄で良いじゃないですか」

「いやだ、イチャイチャしたい~!」

「はい、ワガママ言わないでください」

 というような中身のない会話をボクとしているフクちゃんは、ボクのバイトのお手伝いをしてもらってる同室のショートカットで眼鏡少女という、萌えポイント高めな娘である。ボクと彼女が出会ったキッカケも、このバイトである。ボクの最初のバイトの時、フクちゃんが巻き込まれてしまったのである。このバイトの特性として、『目撃者はなんらかの形で記憶を消すか、目撃者自体を消さねばならない』というルールがあるのだが、フクちゃんはここで女は度胸とばかりに

「あたしを雇ってください!

そりゃ、メインの『仕事』は出来ませんが、サポートは出来るッス」

と、言って、ボクも彼女の『技術スキル』のスゴさをその初めてのバイトで知ったので、ボクがこの件を預かるので(ついでに監視係として)、パートナーにしてくれとメールに書いたら、雇用主がOKとしてくれたので、今こうしてボクのサポートをしている。実は彼氏持ちで、異性などもっての他な女子寮生なのにイチャイチャしてるのを、ボクは何回も目撃してるのであった。

 まあ、それはともかくして。

「で、ターゲットのことはわかった?」

と、ボクはフクちゃんに聞いた。

「はい、ターゲットの名前は、マグヌスっていって、某国の外交官とかいう肩書きだけど、まあスパイの隠れ蓑じゃないですか、そういうの。このマグヌスとかいう人も多分スパイですよ」

「証拠もないのに、そんなことを言うのもどうかとおもうけど……」

「いや、コロコロしなさいという依頼がある時点で、ほぼほぼ確定じゃないですか」

「確かに、そうなんだけどね」

 ボクは目の前の箱に写る見るからにウサンクサイ男を見ながら言った。

 まあ、フクちゃんの言うこともわからないではないし、そもそも良い人だろうが、ボクには関係ない。

 ボクは、そのままベットの上に寝転んだ。

 後はフクちゃんが、道具類も含めて用意してくれるだろうから、安心して寝よう。

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