あたらしいものずき

昔、携帯電話を使った感染系ホラー映画があった

あの時代は『何か』を媒介にして感染したり

固定物に宿らせて、人と人を渡らせたり、閉じ込めてたり

随分と幽霊や妖怪にもパフォーマンスが必要だったのだな

と、振り返った

今は情報社会のおかげなのか、純粋なホラーよりも

人間の手によるホラーが多い

やはり個人情報は、人ひとりの命も社会も殺せるツール

悲しくも文明が開化するごとに問題は複雑化の一途である


なんて

前からあったこと

財布を落とせば嘆き

書類が入ったカバンを落とせば首が飛び

電子カードを落とせば「定期が」と後始末

少し前、車の中に置き去りが

その藪の中には赤ん坊が

池の中に水死体

路肩には空き缶やごみ箱に捨てられた死体

誰かの密告で捕まって

誰かのまじないで命を落とし

ツケは、いつだって弱者と被害者

強者の中で見栄を張り、見得を張る

いつだって夜に怯え、明かりがないと不安がる


昨今、ホラーは変わらず新しいものであった

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自由散文詩掌編『携帯電話』 朶骸なくす @sagamisayrow

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