第21話 幕間・執事の手記4


 さて、こうして『あやかしの仕立て屋』での依頼も無事に終えることができました。


 屋敷の外での調停は、普段より難易度が高いものですので、今回の成功ははるか様にとっても良い経験になったことでしょう。

 私、みやも執事として感慨深く思います。


 ……まあ、遥様が幽霊を自分に取り憑かせるなどとは、さすがの私でも完全に想定外でしたが。

 まったく、困った方です。みすず様とは違った意味で肝が据わり過ぎていて、これでは執事として心の休まる暇がありません。


 しかし、同時に期待も膨らみます。

 仕立て屋の店主の願いを真に叶えられたことは、間違いなく遥様の功績ですから。

 まだまだ危なっかしい坊ちゃまですが、執事として今後とも支えさせて頂きましょう。



 ――いつかあなたが立派に成長し、私という執事を必要としなくなる、その日まで。



 ちなみに。

 遥様の着物姿はこっそりと写真に収めておきました。

 あやかしの使う妖術写真機と人間の使う一眼レフカメラ、両方を駆使して完璧な記録を残しております。

 いずれ大きく引き伸ばして、執務室に飾りましょう。

 その時、遥様がどんなお顔をなさるか、今からとても楽しみですね。


 おっと、そんなことを書いていたら、そろそろ遥様のお目覚めの時間です。

 朝食と制服のご用意をし、ベッドまでお声を掛けにいかねばなりません。

 

 まだまだ手記を書き足りませんが、致し方ありませんね。

 常に主人のことを一番に考えるのが、執事の務めですから。

 大変名残惜しいですが、一旦筆を置きまして、この続きはまたいずれ――。

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