ノブレス・オブリージュ 上

 まだ物心がついたばかりだろう、人の醜さなど写した事の無い透き通ったどんぐり眼に少しだけ恐怖の色を滲ませていた少年に対し、母親と思われる人物の声が優しく掛けられる。

 「あなたは特別な存在なのよ」

 何が特別なのだろうか、この時彼自身自分の体の何処が特別なのか、そもそも特別という言葉の意味すらまだよく知らない。

 多くの言葉の意味を知らない、宝石の様に綺麗な瞳が汚れていない分、文字の読み方すら知らない。

 それもその筈だ、彼はまだ4歳だ。

 どんな環境にせよ、これから集団行動を学び、他者とのコミュニケーションを学ぶ事が精いっぱいな子供に、今託された期待の意味など理解できる訳が無い。

 「いいかい、これからすごい事が起きるんだよ」

 今度は父親の声が掛けられた。

 何処か期待を孕んだ危機感など一切無いその声に反応して振り返ると、父親は真っ白な服に包まれた体を曲げ、少年の頭を優しく撫でる。

 「良いかい、パパとママはここまでしかいっしょに居られないんだ。

 でも大丈夫だよね? クーナは強い子だもんな」

 父親はギュッとその体を抱きしめると、簡易的な別れの言葉を投げかけて、その身を離す。

 「また直ぐに会えるからねクーナ、あっちに居るおじさんたちの言う事を良く聞くんだよ」

 そう言い、父親と同じように簡単な別れを告げると、クーナの背中を押して開かれたままの自動扉の方へと小さなその体を進めさせる。

 「うん!」

 両親からは今日中には直ぐに再開出来ると説明を受けていた、だからこそクーナもこれといって悲しむ事も無く、力強く別れの挨拶をする事が出来た。

 幼稚園での別れの挨拶と変わりない、違うとしたら場所が明るい太陽の下では無く、人工の明かりが照らすそっけない室内であるだけだ。

 全体的に白を基調とし、床は灰色のリノリウムが敷き詰められている、デザインよりも清潔感を優先したと思われるその室内にはインテリアの類は一切無く。

 クーナが立つ先には、彼を招くために開かれた扉が一つだけ用意されていた。

 「それじゃクーちゃん、行ってらっしゃい」

 「行ってきまーす!」

 相変わらず元気よく返事をするクーナ、彼は半ばスキップにも似た足取りで飛び跳ねると、手を引く白衣の男と共に扉の奥へと足を進めていく。

 彼は特別な存在だった、それ故にまだ年端のいかない子供であった彼はこうしてこの扉をくぐる権利を得ていた。

 しかし、当の本人にはこの扉の先に何が用意されているかなど知らない。

 ただ一つだけ知らされていたのは、自分は人の役に立てる存在である事。

 そしてその詳細を説明されたのは彼の両親だった、自分等の愛する子ががこうして協力する事でさまざまな事象が紐解かれていく、自分の子供が革命を起こすかも知れない、そう聞かされた両親は、クーナをこの研究に協力させることを決めていた。

 そんな期待に胸を膨らませ、温かく見守る両親の先で、扉は僅かなモーター音を響かせて閉じられた。






 部屋一面に散乱した大量のガラス片。

 一部ひび割れ、べニア板で補修された箇所が目立つ窓ガラスから漏れる光に照らされ、その断面は怜悧な美しさを主張していた。

 だが、どれだけ美しいと言えど、下手に素手で触れば皮膚は切れ、赤い血が流れるだろう。

 一見すれば真新しい新雪の様にも見えるガラス片、危険な凶器に満たされたその場所において不意に目を覚まし、上体を起こしたその男の存在は異端とも言えた。

 「……うおぉっ!」

 体に乗っていたガラス片を躊躇も無く、土埃か何かを払う様に軽い仕草でそれらをはたき落とすと、傷一つ付いていない顔に柔和な笑みを作るり、驚きのけぞったままのイントに目配せをする。

 イントが柄にも無く驚いたのも無理が無い。

 癖が無く人懐っこそうな目の前の相手だが、イントの感覚ではそう簡単に目を覚まし、ましてや何事も無かったかと言わんばかりの様子で笑顔を見せるなど思ってもいなかった。

 「ああ、ごめん、ちょっと驚かせちゃったかな」

 「……謝るなよ……驚いてはいないから……」

 精いっぱいの強がりを見せるイントに対してその相手は状況がつかめてないらしく、廊下を見渡して疑問符を浮かべる。

 それもその筈だ、今は学校としては使われなくなった校舎はまともに修繕する技術を持った人間が居ない為窓ガラスはひび割れ、もしくはべニア板を張り付けられた状況が目立つ。

 リノリウムの床はところどころ剥がれ、モルタルの地をまだらに覗かせているあり様だ。

 おまけに、倉庫に置くほどではないが教室に置くには邪魔な荷物の類は廊下の隅に集められ、ところどころ小高い山を形成している。

 更に、それら全ての上に今は満遍なくガラス片が降りかけられ、雪のシーズンに差し掛かったばかりの山の様に美しい輝きを纏っている。

 この状況を見て、この空間が元々は学校の一部だったと信じる人は限られるだろう。

 寧ろ『ここは戦場だ』と言われた方が安易に納得が出来る。

 「あー、えとだな……大体の状況とかは判るか?」

 頭をぼりぼりと掻き、どもりながらも相手を落ち着ける為の言葉を発するイント。

 複数人と同時に話す場合なら、相手の注目が自分だけに集中しないのでそつなく会話をする事が出来る。

 だが、この男の様に紳士的に自分の目を見つめ、言葉の一つ一つを聞き取ろうとする相手のとの会話は苦手だった。

 ガーフィンやクーナと違い、この男とスムーズな会話をする事は彼にとって難題ではあった、だが、今ここで自分がしっかりとしなくては、相手の不安を煽ってしまう。

 そんな彼の意思を読み取ってか、名前すら不明な男は短く息を吸い込むと口を開いた。

 「予想以上に何か大事に巻き込まれた様ですね」

 そう言い、子供の様に裏表の無い自然な笑顔を作ると、男は何かを思い出したかの様に右手を自分の胸元へ当てた。

 「もしよろしければ何が起きたのかを教えていただくと助かります、ああそうです、私の呼び名が判らないのも何かと不便ですね。

 私の事はマキナとお呼びください」

 前のめりにつっかえていたイントの言葉の腰を折る一言だが、そのおかげで一旦言葉を仕切り直す事が出来たイントは自身の名前を伝えると、会話を本来の路線へと戻した。

 「とりあえず怪我とかは無いか?」

 「その点に関しては一切の心配は無用ですよ」

 言葉通りの意味なのだろう、マキナは不思議そうに床に落ちていたガラス片を摘み上げると、傍目には所属不明な根拠を示す。

 「随分な自信だな」

 「ええ、自分はこれでもアバンギャルドですから」

 「アバン……ギャルド? 何だそれは」

 マキナが当然と言った具合に紡いだ聞き慣れない単語。

 彼としてはその言葉の意味は誰もが知っていて当然の様だが、聞き慣れない横文字に首を傾げてしまうのは当然の事だった。

 だが、マキナとしてはその反応が予想外だったのか、あっけに取られたのか、目を丸くしたまま暫く言葉を失った後、恐る恐ると言った様子で口を開いた。

 「もしかしてアバンギャルドが何か知らないとか……?」

 「……?」

 意味が判らず、フードの下で目を伏せるイントに対し、マキナはゆっくりと意見を述べた。

 「俗に言う超能力者とか、そういう存在の事ですけど。

 本当に聞いた事無いのですか?」

 「……ん? いや特殊能力みたいなのは俺だって持ってるけどさ……そのアバンなんちゃらって呼び方してるやつは一人もいないけどな」

 何処か噛みあわない会話に違和感を覚えつつも、イントは彼の言っている言葉の意味が判ると小さく納得してみせる。

 「つうか、随分と落ち着いてんな」

 「それはまぁ、結果的に予想外な事態にも巻き込まれてしまったみたいですけど、自分が『この世界にやって来た』のは計算の内ですからね」

 再び聞き逃しならない言葉を言ったマキナ。

 「やって来たって……どういうことだ?」

 「言葉通りの意味ですよ、自分は故あってこちらの世界にやってきました。

 とはいえ、その際に起きた出来事に巻き込まれ、あなたに多大な迷惑をかけてしまったみたいですけど」

 その一言はあまりにも予想外だった。

 何故なら、この世界に居る全ての人間は意図してこちらへ来たわけでは無い。

 状況はまちまちだが、誰もが気が付いた時この世界にやってきており、それまでの道すがらも方法も、そして何故やってきたのかも知らないのだ。

 誰もが望んでやってきた訳でもないこの世界に、彼は一人自らやって来た。

 一体どうやって、そしてそもそも何故か?

 「ちょっと待て……やって来たって……」

 「その様子だと、『あなたの居た世界』ではこの技術は確立されていない様ですね」

 更に追加されるマキナの情報。

 今現在イントが居る世界は元ある世界の外れ、いわばおまけの様な物だと思っていた。

 だが、マキナの一言はまるで、元の世界とこの世界の他に、基本となった世界が複数ある事を示唆するかの様だった。

 「ちょっと待て……どういう……」

 堰を切った濁流の如く押し寄せる情報、その渦に飲まれ呼吸困難にも似た状況に陥りつつも、イントは何かを思い出したのか、マキナの手を掴むと力任せに立ちあがらせ、一気に駆けだす。

 「あ……ちょっとどうしましたか?」

 「いいからついてこい!」

 状況が理解できずに慌てふためくマキナを引っ張ったまま、この箱庭の何処かに居るであろうクーナを探して階段へと足を進めるのだった。






 考えるだけで自分の無能さに吐き気を覚える。

 自分の能力は何だ? それを使って何をする事が自分の使命か?

 そして、それらの行為を放棄した時、自分には一体何が残るのか?

 唯一大事に守ってきた特異点を奪われた自分がこれ程ちっぽけだとは思わなかった。

 「……」

 クーナは保健室のパイプ椅子に腰かけたまま、自分の腕を見て深い溜息を吐く。

 ついさっきまで激しく痛んでいた腕だが、今はミグの能力のおかげで完治しており、一切の苦痛は無い。

 だが、それでもずきずきと小さな胸の奥は痛み、それが吐き気を誘発させる。

 何故なのか、それは考え無くても見当が付く。

 いいや、考えすぎているから痛むのだ、じゃあ何を考えているのか? 一体何を許せず悩んでいるのか?

 そんなの考えるまでも無い、自分が無能すぎる事が許せないのだ。

 絶対的な能力にを持つと自負していた自分の探知能力、その能力を持ってしても先ほど襲い掛かった危機を感知できなかった。

 「最低な気分だ……」

 「落ちるとこまで落ちるならいっそ都合が良いだろ? 後は這い上がるだけなんだから」

 口を突いて漏れた弱音、それを聞いていたんか、不意に窓から体を滑り込ませたカルヴェラが訂正を加える。

 「さっき一とおり周りを見て来たんだが、あんたの言った通りイントも同じような状況に巻き込まれたみたいだ」

 「……イントは!?」

 「そっちは聞かなくても判るだろ? これといった怪我をしてる様子は無かったし怪物の姿ももう消えてた」

 理屈は不明だ、だが、あの白い怪物はクーナの能力が通じない。

 それは前回、そして今回の襲撃の際に明らかになった情報だが、怪物の存在を直接認識出来ないからと言って、全くその存在を知る事が不可能と言う訳ではない。

 「妙な動きがあると思ったよ」

 怪物はクーナの能力を受け付けない、だが実態がある限り、その存在は周りの物理法則に一切の影響を与えないわけではないのだ。

 川の中に沈めたグラスが目に見えなくとも、実態があるのなら水の流れに変化が生まれる。

 暗闇の中でも、人が歩けば足音が響き渡る。

 それと同じだ、クーナは怪物本体を認識しようとするのではなく、空気の動きは熱変動など、ありとあらゆる情報を集めて箱庭に起きた異常事態を認識したのだ。

 もちろん、その方法を思いついたのは自分自身が怪物に襲われている際だった為、実際にその効果を発揮した時には事態は収拾していた訳だが、少なからず前進である事は間違いない。

 「一歩前進だな」

 「一歩じゃ遅いんだよ、もし何かあったら……」

 「あまり気に病むな、そう言うのはミグでも治療出来ないんだ」

 腕組みして呆れるカルヴェラを余所に、不意にロッカーが激しく音を立てて揺れると、遅れてミグの声が響き渡る。

 「ええ、肝心な時に役に立たない人間で悪かったですね!

 はいはいそうですよ! 私は図体だけ大きな唯の役立たずですよ!! はい悪かったですね!!」

 自虐なのかそれとも苦情なのか。

 意味不明なミグの声に呆れつつも、クーナは目を閉じで何か判断してから立ちあがると、ロッカーの扉を開いた。

 「ミグ、ちょっと話しておきたい事がある」

 怪物の存在は箱庭の人間にとって等しく脅威だ。

 だが、確かな事が判らないうちに情報をばらまいては要らぬ不安を煽るかもしれない、そんな判断から彼は今回の一連の出来事を基本的には隠していたが、ここまで事が大きくなってもなお隠すのは危険だろう。

 そう判断し、ミグに対しても説明をしようと息を吸い込んだその瞬間。

 不意に保健室の扉が力強く開いて二人分の人影が飛び込んだ。

 「クーナ!!」

 一人はフードを目深にかぶった男、イントだ。

 そしてもう一人は見覚えの無い男だった。

 「どうしたのイント……っていうかその人は?」

 「新入りだ、っていうかそれよりも……」

 そう言うと、イントはマキナの背中を押して自分の前に立たせると、何かを話す様にせかす。

 イントとしては先ほど彼が漏らした幾つかの情報の説明を求めたのだろうが、肝心のマキナは何か気になる事があったのか、服の裾を揺らせつつ部屋の中の一同を見回す。

 そして、納得したのか鼻を鳴らすと腕組みをしてから口を開いた。

 「この中でリーダー格の方はどちらでしょうか?」

 「……おいマキナ、それよりもさっきの話をちゃんとしてくれ」

 マキナの行動の意味が判らず首言葉の続きをせかすイントだったが、彼なりに何か確信があるのか、落ち着いた様子でイントに向き直り説明を始めた。

 「その説明をする上で、皆がどの程度エニグマに関する情報を持っているのかを知る必要があるのですよ」

 「エニグマ……?」

 当然と言った様子で紡がれた聞き慣れない言葉、それに首を傾げる一同を見渡すと、更に何か合点がいったのか、マキナは当然と言った具合で更に情報を重ねた。

 「エニグマですよ、あなたたちはまだ目撃をした事がありませんか?

 人類に対して絶対的な悪意を持った敵、その存在がどの様にして生まれたのか、そして何を求めて人を襲うのか、そもそも行動原理は何なのか……

 その存在の殆どが謎(enigma)の存在を」

 「……人類の敵?」

 あまりにも突拍子の無い発言、それに驚き目を丸くするクーナの声に対して、マキナは更に言葉を繋げた。

 「そう、人類の敵です。

 有機物なのか無機物なのか、それすらも不明な白く醜い外見。

 圧倒的な力と神出鬼没な立ちまわり、そして一部の能力さえも無効化してしまう特異性。

 ご存じないでしょうか?」

 既に答えが出ているのだろう、マキナは自信たっぷりにそう告げ。

 彼が何の事について説明しているのか判ったイントとクーナは、互いの眼を見つめた後、今度はマキナの顔を見てから露骨に驚いた様子で口を開いた。

 「それって……あの怪物じゃ!」

 「恐らくそれがエニグマですね」

 自身の持つ情報と箱庭の住人が持つ情報の食い違い、それがどの程度あるのかに検討を付けたマキナは、己が持つ情報と一同の情報を並列化させるために言葉を繋ぐ。

 「とりあえず皆さんがどの程度の情報を得ているか判りました。

 ここに居る全ての人間は、自分達がどのような経緯を得てからこの世界にやってきたのかを知らず。

 エニグマと言う存在の事も良く知らない。

 そしてそもそも、自分達が住まうこの世界が何なのか、そして他の世界の事すら知らない……そう言う事で合ってますね?」

 ゆっくりと紡がれるマキナの言葉に一同は油汗を浮かべて頷くと、続きの言葉を求める。

 「他の世界ってどういうことだ? まずそこから説明してくれ」

 「勿論です。

 あなた達は今居るこの世界の他にある別の世界からやってきた、そういう認識をしている様ですね。

 それは一部合っており、一部勘違いをしています。

 この世界は基本となる世界とは別に生まれた、ごく小規模な存在。

 ですが基本となる世界が一つであり、皆同じ世界からやって来たという考えは間違いですよ」

 あまりにも突飛かつ、誰も想像すらしていなかった推測。

 一同は呆れや驚きを通り越した現実味の薄い仮説を飲み込めず、曖昧な表情で固まってしまう。

 「俗に言うパラレルワールド。

 それぞれが隣り合った別々の並列世界で我々は過ごしていました。

 その世界は互いに混ざり合う事無く、互いに感知する事も無く。

 水と油が分離する様に互いの立ち位置を守って、しかし、その間にそれぞれの世界を繋ぐ新たな世界が生まれてしまいました。

 それがこの世界であり、この世界を生み出してしまった原因、その一つがアバンギャルド、こちらで言うところの能力者の存在です。

それ故に限られた人間であり、この世界との親和性の高いアバンギャルドだけがこの世界に足を踏み入れる事が出来ます」

 突飛なんて言葉で纏める事自体間違っている。

 自分達が信じていた仮説を根っこからひっくり返したマキナは、驚きを露わにする一同を見て満足気にゆっくりと瞬きをするのだが、一人納得がいかない様子でこちらを見つめるカルヴェラに対して目配せをした。

 「随分と立派な仮説だが、それだけの情報をあんたはどうやって得たんだ?」

 「それは当然の事ですよ」

 カルヴェラのサングラス越しの視界の先で、マキナは自分の胸に手を当て言葉を繋いだ。

 「私は『ノブレス・オブリージュ』の人間ですから」

 「だらだらと訳判らん単語ばかり披露しやがって、んじゃあ聞き方を変える。

 お前は一体何の為にここにやって来た」

 いつもとは違う攻撃的なカルヴェラの発言、一同はその意味が判らず焦りを覚えるのだが、そんな彼の態度に嫌悪感を覚えるでもなく、マキナは相変わらずな様子で回答をする。

 「エニグマの引き起こした騒動で私を受け入れたく無いと思うのは当然の事ですね、ですが安心してください。

 私はあなた達の敵では無く味方です、いいえ、正確には利害関係が一致した人間であると答えるのが正しいですね」

 「……」

 返す言葉に困るカルヴェラの反応を見て、ゆっくりと残りの言葉を繋いだ。

 「私がこちらの世界にやって来た理由。

 そして、私が所属する『ノブレス・オブリージュ』の存在理由。

 それは、『全人類の保護及び全エニグマの駆逐』ですからね」

 まるで自分が正義の味方だと言わんばかりに、一切の迷いも無くマキナは自己紹介を済ませるのだった。

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