おさんぽ、???ちゃん


「???ちゃん、今日はどこいくの?」


これは俺がまだ小学校低学年だった頃の話。


当時の俺は親に挟まれた川の字で寝ていた。


夜中に目が覚めた俺はリビングにいった。


親のイビキがうるさかったからだ。


やることのなかった俺はテレビをつけた。


勿論まともな局はやっていない。


どこも通販番組ばかり。


でも、深夜アニメはやっていたんだ。


子どもだった俺は救われた気持ちになった。


「???ちゃん、今日はどこいくの?」


映像は簡素で背景は使い回し横スクロール。


真ん中で恐竜がひたすら歩くだけのアニメ。


音楽や演出で魅せる、といえば過言か。


たまにポップな絵柄のキャラが出てくる。


恐竜と彼らのふれあいを描いていたと思う。


恐竜の名前は思い出せない。


ただ、回が進むと背景も変わった。


五分間の恐竜の冒険譚のようなものだった。


恐竜の行く末が気になって毎週起きていた。


「???ちゃん、どこにいくの?」


秋が終わり、 深夜も冷え込んできた頃だ。


今思えば1クールが終わるくらいだろう。


突然、アニメの雰囲気が変わった。


背景はなく、真っ暗。


恐竜は進んでいるのか足踏みしているのか。


動きに合わせてピアノの音が聞こえる。


やがて、恐竜は音もなく画面から消えた。


ただの暗闇を写すテレビ。


大音量のフキョウワオンが鳴り響く。


俺は起きてきた母親に泣きついた。





最近思い出してインターネットで調べた。


でも、名前どころか絵も出てこない。


記憶に残っている単語では不十分みたいだ。


1個引っ掛かったのがあるとすれば


『ぽまいらにアニメの地獄をおしえたる』


というスレッド。


『これを放送して俺は死ぬ』


その投稿時間は多分当時のあの時間だった。


<完>

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