第8話 カッパ頭と猫と俺と女の子に女神様

「お願いします! この猫を治療して下さい! お金は私がちゃんと払いますから」


教会まで必死で走り、やっと神父カッパ頭みたいな人を見つけて俺はそう捲くし立てた。


その人はチラっと俺と猫を見たが、すぐ視線を俺からも逸らした。


『神の奇跡の業は、猫にまで与えるものではありません』

と冷たく言い放った。


「嘘でしょ? お金は払うよ。今の手持ちで足りなければ分割で払う。絶対に全部払うから。お願いだよ!」


俺が必死で頼んでいる間にも、カッパ頭はもう俺から距離を置き始めた。


演技でも何でもなく、俺の両目からは自然と透明な涙がこぼれた。


こんなホムンクルスライムでも、目から涙はちゃんと出るんだな……。

神父にいくら泣きついても、お金を払うと言っても無駄だった。


悔しくて、悲しくて、教会から出たのはいいが

その周囲を意識せずフラフラと泣きながら歩く。


この猫を助けてやれない。

自分の不甲斐無さに泣き、神父カッパ頭の対応には、ただただ憤慨した。


『ニャー~・・・』と時折、か細い声で鳴いて猫が見上げる。

猫が少し動き、ちょっとバランスが悪くなったので、重心の位置調整をしようと猫を優しく抱き上げると、猫も私に顔を近づけてきて、丁度お互いに頬ずりをするような形になった。


「ごめん……。ごめんね」と私は何度も猫に謝る。謝るしかなかった。


その猫は、私の目から絶えず流れ落ちる涙をそっと舐め続ける。

それはまるで、私の事を逆に慰めてくれているようだった……。



『おねえちゃんは、どうしてないてるの?』


その声にハッと気が付くと、目の前には小さな女の子が立っていた。


どうやら俺は、教会の裏手にある孤児院の敷地の近くまで、

泣きながらフラフラと歩いていたらしい。


こんな小さな女の子にまで、泣いている姿を見られてしまった。


『そのねこちゃん? しんじゃうの? だから、おねえちゃんはないてるの?』

目の前の女の子も、そう言って悲しそうにしていた。


「この猫はまだ生きてる。でも病気みたいで治してあげられない。このままだとすぐ死んじゃうかもしれない」

神父にも断られた事も伝え、子供にもう打つ手がない事を話した。


この猫はもうすぐ死ぬ。もう目を開けることも出来ず浅い呼吸をするだけ。

小さな女の子も、それがわかったのか私と一緒に猫を優しく撫でる。


そして女の子が、せめてこの猫が死んでも天国に行ける様に、

お別れのお祈りをしようと言い出した。


『おおいなるそんざい、じぼしんららふぇさま、そのかんだいなおこころによって、どうかこのねこちゃんが、てんごくにいけますように、おみちびきください』と、

だいぶサマになった言い方でお祈りを捧げ始めた。

俺も真似して復唱する事にした。


そのとき


……!


2人は体に電流が流れたように、体をビクン!とさせた。

不思議と痛みは無い。


そして2人の頭の中に、聞こえてきたのは女神様慈母神ララフェさまの声だった。


『私の声が聞こえますか? 今ならまだ何とか間に合いそうです。何も聞かず今はただ私の指示に従って下さい。私は今からからその女の子ミサを覚醒させます! そうすればきっとこの猫を助けられます。だから急いで!』


女神様の突然の声には、女の子も驚いているみたいだったが。

しきりに肯いている様子から女神様の指示には従うようにしたようだ。


「か、覚醒って何?」とか、俺の頭は色々疑問だらけだったが、

すぐに意識を切り替え女神様の指示に従うことにした。


俺と女の子の2人が手を繋ぎ、もう片方の手で2人は猫に触れる。


目を閉じ、頭の中から聞こえてくる女神様の声の通りに、言葉を復唱していく。


「・・・いぶつなるもの、じょうかさせたまえ、きよめたまえ!病気治癒キュア・ディジーズ!!!」


俺の中の魔力が、繋いだ手から女の子へと伝わっていく感覚。

そしてそれが女の子を通して、何倍にも増幅され瀕死の猫へと注ぎ込まれる。


そして……猫がゆっくりと目を開ける。

大きく尻尾も動いた。


『ニャー』


猫は目の前にいる『愛おしい存在』の2人を見上げ、嬉しそうに小さく鳴いた。


……俺と女の子はまた泣いた。


嬉しくて泣いたのだ。

泣きながらもずっと猫を撫で回し続けた。


猫はちょっとだけ迷惑そうに『ニャー』と鳴いた。





【リザルト】

○スキル:神託Lv1 が発現しました

「学習」スキル効果により、神聖魔法Lv1の習得に成功

○初めての「魔法」獲得によるボーナスExp100獲得

○レベルが4に上がりました それにより各ステータスも上昇しました

○レベル上昇により、カルマ値+10

○ボディの活動エネルギーが超回復&最大値がUP

○Exスキル:「眷属化Lv1」が発現しました

○眷属「魔猫」獲得 全てのステータスが眷属の能力値分上昇しました

○眷属スキル:「暗視」「軽業」「静音移動」「気配察知」「気配遮断」「野生の勘」が共有化されLv1が使用可能となりました 眷属とは意識共有も可能です

○眷属初獲得によるボーナスExp100獲得

○称号「ネコ友」獲得 猫種族との相性度が+20上昇します

○称号「ネコ魂フレンズ」獲得 猫種族との相性度が+30上昇します

○称号「ネコマスター」獲得 猫種族との相性度が+50上昇します

○「生命の尊重」善行:カルマ値+5

一定のカルマ値を達成した為「恩恵」が強化されました(全ステータス1%上昇が付与されました)

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