第24話 山井出 千夏の見た世界 『空へ』

「………」


 私の腕の中で意識を失ったかっきちゃんが、小さな寝息を立ててる……。


 ――かっきちゃん……。


「――――」


 平伏――というか、思わずこの場でヒザをつき、そのまま頭を下げたくなってしまうような……そんな衝動に駆られてしまう……。


 スゴイよ……。 本当に、尊敬する……。


 身体はボロボロで、体力だってカラッポ……。 そんな状態で……何で、私を助けられたの……?


「――……~~~~っ!」


 殺さなくて、よかった……。


 止められて、よかった……っ。


 殺人も当然そうだけど――。


 妹の……かっきちゃんが見ている目の前で殺人を犯す。


 そんな最低の姉にならなくて……本当に、よかった……っ!


「――――」


「………」


 チラリと視線を上げ、破壊尽くされた前方の空間を見つめる。


 『剣戟けんげきの森』は全て掻き消え、床には腰を抜かしたように床に座り込んでるあの彼女の姿。


「………」


 ――そんな現状を眺めながら、あらためて考える。


 私がさっき放ったあの重ね十字……。


 その時の感情はともかくとして、あの速度と威力は間違いなく、今の私に出せる攻撃の中で最大レベルのものだった……。


 重ね十字が放たれ、かっきちゃんの叫び声が聞こえた瞬間――その後からとっさに放った攻撃によって軌道が変わった……。


 それは、わかるんだけど……。


 つまり……先に放たれた重ね十字より、後から放った攻撃の方がスピードが上だった……?


「――………」


 フルフルと首を振り、その考えを否定する。


 たとえそうだったとしても、後から追いついた攻撃であそこまで軌道が変わる、その現象自体がおかしい……。


 う~んと首をひねり、うなってしまう。


 ……そう。 あれは……私の攻撃そのものが、いきなりワープか何かでもしない限り、あんな感じには……。


 ワープって……何もない空間を飛び越えた、ってコト……?


 ――あ、違う……。 何もないってワケじゃないか……二つの間には、目には見えないけど普通に空気が、あって……。


「――――」


 そこでハタと気付く。


 ――空気……。 そっか……この世界は、空気でつながってる……。


 それじゃあ……あの攻撃は空気を媒介にして、いきなりあんな遠くに直接伝わった……?


 ――でも、もし……仮にそうだったとしたら……っ!


 ついさっきの感覚を思い返しながら、周囲が空気であることを念頭に置き、手にした竹刀を押し出すようなイメージで軽く振り抜く。


「――――」


 遠くの――数メートル先にあった壊れかけの本棚が、いきなり大きな音を立てて爆散した。


「――………っ!」


 その音を聞き、今まで尻餅をついていた桜花がビクッとなって震え、そちらの方に身構える。


「――あはっ!」


 意図せずつい――そんな感じの笑い声が、とっさに口から漏れ出てしまった。


 空気……。 空気を媒介にして、放つ攻撃……。


 ……ん? もしかしてコレ、攻撃だけじゃなく、私の動き――その全てに応用が利くんじゃ~……。


「――――」


 そう思い立ったら即行動。 


 最初に試す相手が彼女だったら、これ以上はない最高の練習環境だった。


「く……くそっ! 情けで私を見逃した上、その勝ち誇った余裕の笑み……っ」


「それで私に勝ったつもりかっ! 山井出 千夏っ!!」


「――――」


 そう叫ぶと同時に、ビシッと向けられたナイフの切っ先が細かくプルプルと震えているのが目に入る。


 見逃したって……そんなつもりじゃなかったって言っても、あの様子じゃ絶対に信じてくれないよね……。


 少し気の毒だとは思うけど……ホント、ゴメンね。


 今は1秒でも早く、この力……試してみたいんだ!


 そういえば……この子の名前って確か~、かっきちゃんと名乗り合った時に言ってた……黒木 桜花さん、だっけ? だったら――クロちゃん、だね。


 クロちゃんには悪いと思うけど……ちょっとだけ、私に付き合って――。


 剣を押し出すよう、遠くに……。 うん、その感覚は覚えてる……。


 今度はそれを竹刀を振る腕の動きじゃなく、普段の……普通に走る動きの中に取り入れてみる……っ!


「―――っ!!」


 壁!?


「――っと!!」


「――――」


 まるで、それは――高速のコマ送りで切り替わる、テレビの早送り映像。


 瞬間ごとに変化する視覚情報と、今の自分の動きをどうにか同調させようと、必死になってコントロールし続ける。


「――――」


「――――」


「き、消え……!」


「な、何なんだ……っ! その動きはっ!?」


 今の千夏の動きは、桜花の目ではまともに捉え切ることができず、ただ後から音だけが遅れて聞こえ――。


「っ! ――………っ!」


「……~~~~っ!!」


 そうして、周囲から聞こえてくる音に反応しながら、桜花が身体の向きを二転三転させ続ける。


「――――」


「――――」


「……―――っ!」


 ――っと……よしっ。 ようやく、慣れてきた~っ。


「――――」


 ――ポンと、クロちゃんの肩を軽く叩き、合図。


 それで、こっちの準備ができた旨を直接伝えた。


「――………っ!」


 ――っと、危な~。


 こっちはそのつもりだったけど、肩を叩かれたことに過剰反応したクロちゃんがまるでお化けに怯えるかのようになって両手のナイフを瞬時に振るってきた。


「お、お前は……一体、何なんだっ!!」


 聞こえてきたのは、少し震えた感じの声。


 ……ん? クロちゃんってば、ナイフを構えた腰が少し引けてて……もしかして、思ったより打たれ弱かったりする~?


 ――だったら~……。


「――――」


「――………っ!!」


 もうちょっとだけ脅かしてみようと、素早く後ろから近づいたところで再び両手でナイフを振るわれ、それは失敗。


 ――うんうん。 クロちゃんのやる気と気合は充分。


 なら……こっちも――。


「――クロちゃん」


 これまでクロちゃんの視線から逃れるように動いていた足を完全に止め――正面からまともに向かい合う。


「……―――」


 練習……というか、準備運動はここまで。 ……いざ、本番。


 今の……この私の状態で、一体どれほどの力を発揮できるのか……。


 試して――みたいっ!


「――さぁ、いくよ! クロちゃんっ!!」


 そう宣言し、私は――。


「――――」


「――――」


「――………」


 たった今……真正面に現れた山井出 千夏が叫んだ直後、その姿がいきなりフッと闇の中へ溶けて消え――それと同時に訪れた不自然なほどまでの静寂……。


 ほんのついさっきまで、アイツが瞬間移動のような動きをするたび、爆発音のような騒音と振動が鳴り響いていた……。


 それが全くしないってことは、つまり――。


「――リーダー!! 上っ!!!」


 考えをまとめる間もなく、聞こえてきた部下の叫びに反応し、視線をすぐさま上へ――。


「―――っ!!!」


 ――いない!?


 そう思った直後――見えた視界の端で、部下達が見つめる視線の先に気付き、頭の向きを今よりさらに高く――ほぼ真上近くまで上げたところでようやく捉える。


「――――」


 ――何だっ!? その、『高さ』はっ!!


 人の跳べる高さの限界は知っている。


 その最大級――限界のつもりで合わせた視線ですら、まだ足りなかった。


 それはまるで、ほとんどビルの屋上から落下してるような状態と大差なく――。


「―――っ!!!」


 落下中だった山井出 千夏が、そこからさらに『空中で踏み込んで』加速し、重力と自重を上乗せした渾身の打ち込みを放ってきた!


「――――」


「――が! あ……っ!!」


 とっさに受けた左手のナイフが、山井出 千夏の竹刀によって瞬時に打ち砕かれ――それでも勢いは止まらず、左の肩口へ直撃した。


「――――」


 狙ったのか、偶然か――。


 それは山井出 勝希の攻撃が初めてまともに入ったあの一撃……。 それと全く同じ箇所を、今度は山井出 千夏に打ち抜かれてしまった。


「……~~~~っ!!!」


 そのあまりの激痛に顔を歪ませ、それでもギッとなって歯を食いしばる。


「……―――っ」


 左肩から先の感覚が全くない……。


 骨は折れてない……が。 それでも、少なくともこの戦いの中では、もう使い物にならないというのだけは理解できた。


「――……~~~~っ!!」


 湧き上がる怒りとともに、どうしても感じてしまう理不尽な思い。


 答えなんて欠片も期待してないが、疑問をぶつけずにはいられない。


「お、お前は……――何なんだ……突然っ!」


「それほどの力……一体どうやって……っ!」


「ん~?」


 返ってきたのは、あまりにも緊張感のない声。


 その相手が軽く振り返り、口を開く。


「ん~、力っていうか……これ、コツみたいなものだよ?」


「人と人、物と物の間には何もないようで、空気があるでしょ?」


「だからその空気を空気としてじゃなく、形のない広がったモノ――つまり、物質として捉えるの~」


「そうすれば後はカンタン。 武術でいうところの遠当て。 ……それを、この竹刀と空気の間で再現させれば――」


「――――」


 少し離れた場所にあった棚が、いきなり大きな音を立てて破壊される。


「――ほら♪ ああやって遠くにある物も、近くにあるものと同じように攻撃できるでしょ?」


「それから、それを今度は足の動きに応用……」


「つまり空気の中を動くんじゃなく、水の中を動くみたいにイメージで~……」


「こう……してっ! 水中を蹴るかのように押し出す感じで動けば――っ!」


「ほらっ! ――こんなふうに! 動ける! ――ってワケ」


 山井出 千夏の姿が次々と消え、次の瞬間には数メートル先にパッと現れる。


 まるで瞬間移動であるかのような――そんな動きの連続。


「それにクロちゃんだったら大丈夫っ。 すっごくセンスあるから、すぐに同じことができるようになると思うよ~?」


 そう長々と説明し終え、満足げに微笑む山井出 千夏。


「………」


 それを聞いていた間、愕然がくぜんとなって言葉を失ってしまう。


 普通に答えが返ってきたことはもちろんのこと、問題はその内容だった……。


 バカ、げてる……。 何だ……それは……。


 空気を物質として捉える……?


 武術の遠当てと同じ原理?


 クソがっ! それがどれほどの高みにあるのか知ってるのか!?


 お前は、一体何者なんだ……っ!


 これまで……私に敵う相手なんて、世界のどこにもいなかった。


 ――そうだ……。


「わ、私は最強の……私こそが、世界の……」


「アナタが――」


 話す自分の言葉を意識的にさえぎるように告げられた、山井出 千夏の放つ声。


「アナタが、たとえ世界の……ううん、それを超える神様のような力を持ってたとしても――」


 チラッと視線を向けた先、そこには床に横たわっている山井出 勝希が、いて――。


「――今の私はきっと、その神よりも強いよっ」


「――――」


 そう言った瞬間、勝気な笑みを見せた山井出 千夏の姿が――いきなり数十人に分裂し、その全てがまとめてこちらに襲い掛かってきた!


「―――っ!! な!」


 これは残像。


 新たな移動法を完全に自分のものとした山井出 千夏が、縦横無尽に桜花の周囲を駆け続け――。


「――………っ!」


 風……っ!?


 まわりに見える『千夏達』の速度はさらなる上昇を続け、ついには足元から旋風が生じ始めた――。


「――――」


「――――」


 空気を押し出し、蹴れることがわかった……。 だったら、今の私は……きっと――。


「―――っ!!」


 高速で走り続けながらいきなりその場で急ブレーキ、まるで飛び立つ直前の鳥になったかのように高々と両手を振り上げ――。


「――さあっ! 飛ぶよっ!!」


 そう宣言し――地面を爆発させた!


「―――っ」


 その瞬間、元々半壊状態だった図書館の天井が全て粉々になって吹き飛び、細かく砕けた破片もろとも――空高く舞い上がった。


「――――」


「――………」


 こうして……映る視界に入ってくるのは、見渡す限りの……満天の星空。


 私の……子供の頃からの夢が、ひとつ叶った。


 いつもよりずっと近くに感じられる月と……見える星々……。


 私……いま! 空飛んでるっ!


「―――っ」


「う……わっ! ――ぐっ!!」


 同時に耳に届いてくるのは、今の私と同じぐらい興奮状態になってる、手をつないだままの、クロちゃんで――。


「――――」


「――――」


 この、高さ……! マズイッ! 何かつかまる所はっ!! いや! それよりも――。


 桜花がこの状況をどうにか打破しようと、必死になって思考をめぐらせ、周囲の状況と現状を確認し続ける。


 少しでも生き延びる可能性を上げるため――脳内であらゆる行動をシュミレートするも、その全ての結果が死につながってしまう。


「――――」


 そんな最中さなか――今まで無理やりつながされていた手がパッと離され、千夏と桜花の二人が落下し続ける空中で、直接向かい合う形となった。


 あせりと恐怖、その両方の表情を浮かべている桜花とは対照的に、千夏はいかにも楽しげな笑顔で――。


「――さあ、クロちゃんっ。 ラストバトルだよ!」


 そう宣言した千夏の言葉は、落下する風切り音の中でも何故だかとても澄んで聞こえてきた。


「――………っ!」


 桜花の思考が一瞬停止し、心の底から動揺が広がっていく。


 バト、ル……? ――戦う……っ!?


 今……ここで……っ!?


 千夏を見る桜花の目が見開き、何か信じられないようなモノを見る目つきに変わる。


 そんな桜花の様子を見ていた千夏が眉を寄せ、少しだけ困ったような表情をみせる。


「ん~……私って卑怯かなぁ~……。 自分の得意なステージに無理やり引きずり込んで――」


「そこで死の恐怖をチラつかせながら冷静な判断力を奪い、その上で戦おうだなんて……」


 そう言いつつも、瞳だけは真剣にさせたままの顔をキッと向け――。


「……でも」


「あの子は――」


 言いながら、スッと地上を指差し――。


「山井出 勝希は逃げなかったよ?」


 首をかしげながら、最後にそう告げた千夏が純粋な瞳で桜花を見つめ、その視線を決して外さない。


「―――っ!!」


 その言葉を聞いた瞬間、桜花の目の色が変わり――。


「――~~~~っ!!!」


 一度は消えかけていた闘志に再び炎が宿った。


「――くっそおっ!!!」


 地面に激突するまであとわずか。


「―――っ!!」


 けど、そんなことに全く構うことなく、桜花がまともに動く右腕だけで斬り掛かってくる。


「――――」


 私は最強だと……そう信じて疑わなかった。


 そんな私がいいようにあしらわれて、そのうえ山井出 勝希以下!?


 それじゃあ……――私は一体何なんだっ!


「―――っ」


 ここが空中であることすら忘れ――開いていた距離を一瞬でゼロにした桜花の渾身の斬撃が、千夏の前髪を一部斬り裂いた。


「――――」


 桜花自身気付いていない。


 感情を爆発させた桜花が、何も無い空中を踏み込みながら加速し、千夏に対して全方位からの攻撃を仕掛け続けていることに――。


「――――」


 その一撃一撃を冷静にいなし、決して直撃だけはしないようしのいでいく千夏だったが、そのじつ――内心では驚愕きょうがくしていた。


 ――すごい……。


 これだけの才能……。


 そっか……。 クロちゃん、きっとこれまで誰にも負けたことなかったんだね。


 けど……さっきの私の時もそうだったけど、負けるってことは、勝つことよりもずっと学ぶことが多いから……。


 ――だから、あえて言うね。


「私の勝ちだよ、クロちゃん」


「――――」


 先の左腕の再現。


 千夏の放った神速の一撃は桜花が右手に持っていたひと振りのナイフを瞬時に叩き折り、そのまま右の肩口に直撃した。


「―――っ!!!」


「――――」


 それとほぼ同時! 二人が床に激突し、爆発のような轟音ごうおんが周囲に響き渡った。


「――――」


「――――」


「………」


「………」


「――………っ!」


 それからしばらくした後――わずかに晴れた砂埃すなぼこりの間からゆっくりと立ち上がる、ひとつの人影。


 立ち上がったその人物――桜花の両腕はダラリと下がったまま……まともに立っているのがやっとで、瞳の焦点もまともに合ってない。


「――ぐ……っ!」


 こうして今の桜花が倒れることなく、その場に踏み止まらせているもの……。 それは、勝利の――というより、敗北したくないという想いからくる、執念によるものだった。


「――――」


 そんな桜花の様子を目の当たりにしながら、千夏が再度 驚愕きょうがくに包まれる。


 確かに……床に衝突する衝撃はほとんどゼロにさせたけど、それでもすごい……。


 クロちゃんは人を傷付け、すぐに殺そうとかするのはよくないけど、その強さだけはすごいって、本当にそう思う……。


 ――でも……決着はちゃんとつけないと。


「――――」


 千夏の瞳がスッとなって細まり、これまで放たれていた剣気がよりいっそう鋭くなった、その瞬間――。


 ――フッと、千夏の持っていた竹刀が右腕ごと光って消え――その前方の空間にあるモノが出現した。


「――――」


「堅牢な剣の牢獄……」


『――剣牢獄けんろうごく


「……アナタはもう、そこから動けない」


 前回の――『剣戟けんげきの森』とは精度が比較にならない、等間隔に放たれた横薙ぎと突きの組み合わせ。


 それらが、まるで本物のオリのような――格子状の立方体となり、桜花を瞬時に捕獲した。


「――――」


「………」


 そのまま続けて目を閉じ、呼吸を整えている間……自然と脳裏に浮かんでくるのは、学院でのイベント……。


 ネコ先輩、ゴメンなさい……。 せっかくカッコイイ名前付けてくれたのは嬉しかったんですけど、最初も、次も、その後も――ああなったのは、全部ただの偶然で……。


 けど……今の私なら――。


「……―――」


 左手で作った指の輪を鞘に見立て――その鞘の中へ、右手に持った竹刀の刀身をゆっくりと収めていく。


 そのまま身をかがめ……居合いの構えから放つ、その技こそ――。


「――――」


『ゼロ斬り』


「ぐ……! ――ぁ……っ!」


 完璧なクリーンヒット。 けど、すぐには倒れない。


「……―――っ!」


 まず剣牢獄の格子に手が掛かる。


 その次に片ヒザが折れ、同時に腰も砕ける。


 そのまま倒れ込んでいく全身を、しだいに腕の力だけでは支え切れなくなり――。


「―――っ」


 ――ドサリと、そのまま桜花が床に伏せ、意識を失ってしまった……。


「………」


 そんな様子をじっと眺め続けながら思ってしまう。


 本当に……強かった……。


 私とかっきちゃん……。 二人掛かりでやっとだなんて……。


 どちらが欠けても……それが他の人でも、きっとダメだった……。


 私とかっきちゃん……二人だから勝てたって、心からそう思う……。


 ……そうだ、かっきちゃんって今――。


「――――」


「――おね~ちゃんっ!!」


「うわっ!」


「へへ~♪ やっぱり、おねーちゃんだ~♪ いつものおねーちゃんの匂いがする~♪」


 いつの間にか、近くにいたかっきちゃんが私にいきなり抱きついてきて、胸に顔をうずめたままでグリグリと頭を動かしてくる。


「――ちょ! か、かっきちゃん!?」


「え、え~っと……何だか、私が引いちゃうぐらいいつになく積極的だけど、どうしちゃたの?」


「え~? 別に~?」


「ただ私がおねーちゃんのこと、すっごく大好きってだけだけど、何かヘン~……? ――フフッ!」


 何だかこらえ切れないといった感じでかっきちゃんから笑顔がこぼれ、その直後――。


「――――」


 私の耳元近くのほっぺに軽く、触れるようなキスをしてきた。


「~~~~っ!! かかか、かっきちゃん!?」


 その場所に手を当て、顔から火が噴出しそうになってしまう。


「――プッ、アハハハハッ!!」


 そんな慌てふためく私を見て、かっきちゃんは満足げに笑うと――。


「――――」


 私の首に両手をまわし、ギュッと抱きついてきた。


「えっ! な、な……っ!?」


「どうせ夢の中なんだもん♪ そこでぐらい素直な私でいたって、別にいいでしょ~?」


「え? え? ゆ、夢?」


「――――」


 抱きついて目を閉じたままのかっきちゃんからゆっくりと力が抜け、呼吸も徐々に穏やかになっていく。


「そう……私のおねーちゃんは昔から何でもできて……強くて……優しくて……」


「私が困った時に、すぐに飛んで駆けつけてきてくれる……」


「ちっちゃい頃からの、私の憧れで……ヒーローなんだからぁ……」


「――――」


 泣きそうになった……っていうより、もう泣いてた。


「………」


 そう言い終えて満足したのか、その後から聞こえてくるのはかっきちゃんの寝息だけだった。


 そんなことない……。


 こんな私が……私なりに頑張ってこれたのは、かっきちゃんの笑顔が見たかったからって、本当にただそれだけで……。


 かっきちゃんがいなかったらおねーちゃん、きっと何にもできないよ……。


 冗談でも何でも構わない……。


 私のことが好きって……大好きって言ってくれて、私……私、すっごく嬉しい……っ!


「かっきちゃん……。 あのね……前も言ったかもしれないけど、私だって……ずっと――」


「!! ――ゴメンッ!!」


 緊急事態。 かっきちゃんには悪いけど――。


「―――っ!」


 とっさに地を蹴り、そのままかっきちゃんを押し倒すかのようにして前方に身を伏せる。


 動く直前、私の目に入ってきたのは空中で静止していた、あの斬撃で――。


「……―――っ!」


 それが解放されたと同時に爆発が起き――それによって、さっきまで私とかっきちゃんがいた場所に大穴を開けた。


 今……私以外でこれを放つことができる相手って、いったら……。


「――ん、ぅ……」


 倒れ込んだ際、かっきちゃんの頭の下にとっさに腕を挟んだけど、それでも衝撃は伝わってしまったらしく、寝ていたかっきちゃんがそれで目を覚ましてしまった。


 そして――。


「――はー……っ!! はー……っ!!」


 そこにいたのはクロちゃん。


「――ひっ!!」


 かっきちゃんが起きてすぐ、まるで鬼のような形相をしたクロちゃんを見て、ビクッとなって身震いした。


 そして、そのクロちゃんの右手には、折れて刀身が半分ほどになったナイフが握られていて――。


「――――」


 ――フッと、そのナイフが右腕ごと消えた瞬間――。


「――――」


 クロちゃんを閉じ込めていた格子――剣牢獄の前方が粉々になって半壊した。


 剣牢獄に、同じ剣牢獄をぶつければ壊せる。


 そうなるって、頭の中で理解はしてたけど――へぇ……。


 ――って、あれ?


 そういえばクロちゃん、腕……。


 ついさっきまで全く上がらなかったクロちゃんの両腕……。 それがいつの間にか、ナイフを自由に振るうまでに回復していて――。


「――――」


 あれ、って……黒い糸?


 髪の毛かと思っていた黒い糸は、クロちゃんの全身から周囲に広がって伸びており、その先は――。


「――うぅ……リーダー……」


 まわりにいた三人のクロちゃんお友達……。 その全員が苦しそうにしながら、うずくまっている。


「――――」


 そして、その三人が力尽きたかのように意識を失い、次々と動かなくなっていく。


 それとは逆に――。


「――ハーハハハッ!!」


 クロちゃんが大声で笑いながら左右の腕をグルグル回し、首の骨も鳴らす。


「――――」


 そして、全身のいたる所にあった細かな切り傷が目に見えて塞がっていくのが見て取れた。


「どうだ、見たかっ!! お前らにできたんだ!! この私にできないハズがないだろっ!!!」


「――――」


「ん?」


 さっき放った剣牢獄が限界だったのか。


 クロちゃんの持っていたナイフが柄ごとバラバラに砕け、床に散った。


「――まぁいい……。 こんなモノ、もう必要ない……」


「もはやこの肉体があれば十分だっ!! 全てが叶う!! この空も!! 世界も!! 私の思うがままだっ!!!」


 言いながら身振り手振り――高々にそう宣言したクロちゃんが最後に両手を広げる。


「……が、それには――」


「お前の存在がジャマだなぁ……」


「――山井出 千夏っ!!!」


「………っ!!」


 私に抱きついていたかっきちゃんがその言葉にビクッとなって怯え、握っていた拳にも力が入る。


「お、お姉ちゃん……今度は私も一緒に戦うから……! 二人掛かりなら……次こそ……っ!」


「……~~~~っ!!!」


 それは恐怖か、身体の限界からくるものなのか、今のかっきちゃんは全身をガクガクと震わせていて、それでもどうにか動こうと必死な感じだった。


 私が心の中で本当に待ち望む……デレMAX状態だったさっきのかっきちゃんは、すっかり影を潜めてしまっていた。


 それは、そうとして――。


「う~ん~……」


 ふと目を閉じながら腕を組み、思わずうなってしまう。


 今の私が考えていたこと、それは――。


「――うんっ!! やっぱり、クロちゃんは笑った時の顔が一番カワイイって、そう思うっ!!」


 パッとなって、目を見開いた瞬間にそう告げ、明るく笑ってみせた。


「――――」


「……あ?」


 それで桜花のこめかみにピキと青スジが浮かび、必死に上体を起こそうとしていた勝希の全身からも途端に力が抜けた。


「っていっても~、さっきみたいな悪者っぽい笑いじゃなく、心から笑った笑顔のことで~……わかる?」


「~~~~っ!!!」


 平常運転の千夏の状態とは真逆、桜花の顔がまるでポストのように一気に赤く染まっていく。


「――――」


「――――」


 そんな二人のやり取りを聞きながら、つい半眼になってしまった勝希の瞳。


 あ……。 この感覚……私、知ってる……。


 私はあなたの敵で、これから本気で戦う。


 こっちはそんな態度で挑むのに、その相手からは敵としても見てもらえない。


 いつもの……ムカツクほどのお姉ちゃんだった。


 それから――。


「――~~~~っ!!」


 千夏と桜花、互いの異なる主張と意見が食い違い、口論へ発展する。


 え~っと、何? クロちゃん、だっけ? かわいそうに……同情するよ……。


 そんなやりとりを散々やってきた私だもん。 その気持ちは痛いほどにわかるよ……。


 そうこうしている間にも、ますますヒートアップしていく二人の口論。


「だ、大体ね~っ! さっきから口を開けば殺す殺すって――言っとくケド私、絶対に殺し合いなんてしないからっ!!」


「なっ!! ふざけるな! お前が戦わなければ私は――」


 あーもー、うっさいな~この二人~……。


 この時点で私はもう床に脚をだらんとさせた状態で完全にだらけ、他人事のような感じで二人のやりとりを聞いていた。


 そんな時――。


「ん~、確かに殺し合いはしない……でもね、戦ってはあげる」


「――あぁ!?」


「え~、ここに取り出したるは感情の糸~」


「これを~――ここにこうして、竹刀にグルグル~」


「次に込めたるは笑いの感情~……それを~――」


「――――」


 ……え? 何? 何? 何?


 ボ~ッとした感じで千夏の話す内容を話半分で聞いていた勝希だったが、その千夏が話の途中でいきなり振り返り、近づいてきた。


 そして――。


「――――」


 軽く、置くような感じで勝希の手に竹刀が触れられた、その瞬間――。


「――プッ!! アハハハハハハッ!!!」


 いきなり吹き出してお腹を押さえ、弾けたように笑い出してしまう。


「――と、このようになりま~す」


「ちょっ!! ハハハハ!! コ、レッ!! ハハハハッ!!!」


「な、何!? コレ、お姉ちゃんのしわざっ!? プハハハッ!! や、止めっ!! キャハハハッ!!!」


「――――」


「――――」


「はー……はー……」


 ――やっと……開放、された……。


 四つんばいになって床に突っ伏したまま、必死になって呼吸を整える。


 あ~……お腹、痛かったぁ……。


 とりあえず明日、お腹が筋肉痛になるのは確実だと思い、それから笑い死にって本当にあるって、そうとも思った。


「――フフッ、だいじょーぶ? かっきちゃん」


 伏せた私の目の前に、スッと射す影。


 どうやらさっきまでの元凶が、私の真正面に立っているようだった。


「ゴメンね~? ……だって、かっきちゃんとのお別れは、やっぱり笑顔がよかったから~」


「―――っ」


 その言葉に反応し、バッと顔が上がる。


「――――」


 そして、私の目の前にあったのは……一本の竹刀。


 姉が床に片ヒザをついた体勢のまま……その竹刀を両手で私に差し出していて――。


「受け取って、かっきちゃん」


「………」


 言われるがまま、その竹刀を手にする。


「それから~、持った竹刀の剣先で、私の肩を軽く叩いて~」


「………?」


 さっきから頭が働かない……。 え~っと……これで……肩を?


「……――あ」


 やってる途中で気付く。


 これって、西洋の……騎士の誓い……? ――竹刀で?


 どうやら私の姉は、相変わらず、相変わらずのようだった。


 しかも、私は座ったままだし。


「――――」


「……終わったよ、これでいい?」


「………」


 姉が神妙な面持ちでゆっくりと目を開け、伏せていた顔を上げる。


「……それで? 感想は?」


「――無敵っ!」


 全然答えになってないし……。


 私の姉が……実にいつもの姉らしい笑顔でニカッと笑い、そのまま立ち上がった。


 ……まぁ、私の率直な感想としては、とりあえず――。


 ご愁傷様……。


 あんな状態の姉と、今から戦うことになってしまうあまりにも気の毒な相手に対し、同情を禁じ得なかった……。


「――って、お姉ちゃん! これ、これ!」


 先のやりとりで竹刀を私に預けたまま、姉がそのまま相手に向かっていて――。


「――え? いらないよ? だって向こうも素手なんだから、それ使ったら卑怯じゃない?」


「――――」


 そんな――あまりにもいつも通りの姉を見ることで、ますます相手に同情を覚えてしまう。


 そして――。


「――――」


 山井出 千夏と黒木 桜花。


 その二人が互いに向き合い、ゆっくりとした動作で戦闘準備に入っていく。


「待っててくれるだなんて、いっが~い♪」


「どうせ最期だ。 そのぐらい好きにさせてやるさ……」


「私はこの両手に~、笑いの感情を込めて戦うから~♪」


 そう言いながらパシッと目の前で手と拳を合わせ、笑顔をみせる。


「この両手から生じるエネルギーは全て笑いに変換されるから当たっても痛くはないし、ケガだってしないよ~?」


「……本気か? 言っておくが私はそんなことお構いなしに、お前を殺すつもりで戦うぞ?」


「もっちろんいいよ~っ、そうじゃなきゃ本気の勝負って言わないもんねっ!」


「――勝負じゃない、殺し合いだ」


 ここまできても互いの意見は平行線のまま、噛み合ってるようで全く噛み合ってない。


 そして、そんなことなんてお構いなしに、二人の戦いはまさにこれから始まろうとしており――。


「……死んで後悔するなよ?」


「――泣いたって許してあげないっ!」


「………」


「………」


「―――っ!!!」


 次の瞬間、二人の姿はまるで昇り龍のように空へ駆け上がっていき――そのまま、この場から消え去ってしまった……。


「――――」


「――――」


「――………っ」


 ブワッと吹いた一迅の風の後……。 その場に訪れた信じられないほどの静寂……。


 それはあまりにも現実感がなく……そのことがまるで、最初からここに誰もいなかったことを示唆しているかのよう、で――。


「………っ」


 完全に脱力し、動けなくなってしまっている今の私……。


「――――」


 そして……遠くから聞こえてくるのは現実味のあるサイレン音。


 それが、どんどんと大きく……――最も大きくなったところで、いきなり鳴り止む。


「――――」


 次に聞こえてくるのは、慌しく響いてくる複数人の足音……それに合わせて床だって揺れる。


「――――」


 いつの間にか完全に横たわっていた私は、響く足音を子守歌代わりにしながら、最後に思う……。


 ――すごく……いい夢だった……と。


「――――」


「――――」


 次に私が目を覚ますと、そこは当然のように病院のベッドの上で、点滴の袋につながったチューブが腕に向かって伸びていた。


 ポタリ、ポタリと、落ち続ける点滴の水滴に焦点を合わせようとしながら……思考をめぐらせる。


「………」


 夢と……現実の境目が、曖昧あいまい過ぎる……。


 夢としてはわりとよく覚えてる方だけど、問題はその内容だった。


 何か……死んだハズのお姉ちゃんが、何故かいきなり生き返って~……うん、この時点で夢だ。


 すぐさまそう結論付けた私は疲れのせいもあり、それより先を考えることを放棄した。


「――――」


「――――」


 それから体調が戻って退院した私は、何かしらの手掛かりでもあればと思い、あの図書館跡を直接訪れてみた――けど、そこはもう取り壊し工事の真っ最中。


 ……何でも、ここで原因不明の爆発事故が起き、それで建物全体が半壊。


 このままでは危険だということと、元々取り壊される予定だったこともあって、その予定を急きょ繰り上げ、この取り壊し工事が始まったとのことらしい。


 それと、これも少し後になってから聞いた話だけど、黒木 桜花とその仲間達は『くろやいば』と呼ばれる、世界的に有名な殺人代行――つまり殺し屋だった。


 そして、私と一緒に病院に搬送された黒木 桜花の仲間と思われる三人のメンバー達……。


 その全員が次の日の朝にはベッドから抜け出し、もぬけの空になっていたとのことだった。


 ともあれ、これで私は私の知らない内に、あの日の夜ことを知る手がかりをまたひとつ失ったようだった。


 けどこれはきっと、あの日のことは決して思い出してはいけない、考えてはいけないと、そんな意味の含まれた誰かからのメッセージかもしれないと、そんなふうに考えた。


 それと……これは偶然なのか、ちょうど私が病院で目を覚ましたその日を境に――。


「――――」


 世界に大いなる変化が起きた。


 世界中の一部の人間達が、同時多発的に――。


 物理法則や化学では証明することのできない――俗にいう超能力や魔法といった、そんな異能の力に目覚めたのだった。


 その言い方についても、世界はもちろん、国内でも千差万別だったけど、とりあえず最近は『魔法』という名称で落ち着いてきた。


 魔法には基礎というか、基本があったけど、それでもわからないことの方が圧倒的だった。


 とりあえずの基本としては魔法使いは最初に最も扱いやすい『風』を操作することから学び、次に『水』。


 その次に難易度の高い『土』や『火』を操るすべを学ぶといった具合だった。


 それらは四大属性と呼ばれ、魔法を操る者――魔法使いの強さの程度を示すための指針となった。


 そして、その四大属性を極めた者――あるいは一部の例外者が、その四大属性以外の魔法を操ることが可能だった。


 そして……どうやら私もその一部の例外だったらしく――。


「――――」


 私の手の平から発せられる微かな淡い光。


 相手の良くない箇所に直接触れることで病気やケガを癒す。


 私は単純に『手当て』って呼んでるけど、癒しの力のはわりと一般的な魔法で、ケガだけじゃなく病気まで治せるっていうのがちょっとだけ珍しかったりする程度だった。


 それはともかくとして、この魔法の出現によって世界は混乱の坩堝るつぼ


 法律から教育機関、常識やら価値観といった、ありとあらゆるモノが全てメチャクチャとなり、世界中の至る所で大小様々なトラブルが発生していた。


 さらに、それとは別……。 世界に訪れたもう一つの変化、それは――。


「――――」


 ――地面がいきなり爆発。


 そこから津波のような衝撃波が全方位に広がっていく。


 ――けど違う。 よく見るとそれは爆発でも衝撃波でもなく――爆発的なスピードで成長する木々や花々だった。


 それらは発生源を中心に、半径数百キロの範囲まで放射状に広がる。


 それは元々森だった所はもちろん、アスファルトで舗装された道路、果ては砂漠に至るまで、そんなのお構いなしに広がっていく。


 それによって交通機関は完全にマヒし、人々や建物も大惨事。


 さぞかしみんな迷惑してるかと思えば――。


「おおおおっ!!! オレにも能力が……っ!!」


「ばーさん、目が……見えるぞおっ!!」


「あら本当……っ! 私もですっ!!」


「――確かに……ガンが消えてます。 はい」


 この現象に巻き込まれた者達への恩恵。


 若い世代ならほぼ確実、中高年でも半数以上に魔法の力が宿り、さらに死に直結するような重いケガや病気も一瞬で完治する。


 同時に、この現象によって土を操作できる魔法使いが大量発生するため、街の復興も驚くほど短期間で終了してしまう。


 そんな理由もあって、損得で言ったら有益な割合の方が圧倒的に多かった。


 そして、この現象は世界各地のいたる所で発生しており――。


「――――」


 ――それは、何か特殊な力をおびた小隕石の落下。


 ――それは、世界で最高の力を持った魔法使い、またはその集団が引き起こしたもの。


 ――それは、世界を作り、この能力を授けて下さった神様の力。


 などなど……。 諸説は色々とあるものの、確かな原因は一切不明


 この名称についても世界各地で様々。


 日本だけでも生命爆発、魔力暴走、神様の奇跡などがあって、そんな中で私は――空からの贈り物っていうのが可愛らしく、お気に入りだったりする。


 それはともかくとして、世界的には『ライフストーム(命の嵐)』として定義しつつあるようだった。


 そんな――あまりにも非現実的な異常が、ようやく日常に感じられるまでに月日が流れた、そんな頃。


 私は自分の魔法適性とも相まって、高校を卒業してすぐから、念願だった医師になることができた。


 私が医者になってやるべきこと、やりたかったことは初めから決まっていた。


 だから後は、その道を真っすぐ歩いて進む……ただ、それだけだった。

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