第33話 城のモチーフについて-カフカと千と千尋から-

千と千尋の神隠しの再上映を見てきづいたこと。

なぜカフカの「城」で、男は城へ辿り着かないのか?

城のモチーフには矛盾した両義性がある。

「城」は千と千尋においては絢爛たる湯屋であるとともに、無意識の水かさが増して海が生じ、電車を乗り継いだ先にある沼の底にある、鄙びた田舎の一軒家でもある。ふたつは双子の姉妹がそれぞれ治める同じ場所である。

明晰な意識上では決してひとつにならないふたつは、ある一定の稀有なこころの状況下でのみ共存できる。千尋の中で無意識の水かさが増し、意識が海(無意識)に沈んだとき、ふたつは一時的につながった。

なお冒頭で廃墟であった町も夜には湯屋街、エンドロールでは昔ながらの田舎町へと姿が変わる。


カフカの城では、男が城だと思った所は城ではなく、官僚たちがせわしく動く無機的な場所だった。今のところカフカの「城」が含む意味を、僕はことばで説明できない。だがカフカの「城」からはなにかことばを超えた、神話素の持つチカラをつよく感じる。

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