第32話 「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」から考える

村上春樹「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」より


森で毎年苦しみ死んでゆく獣たち。無意識の森で毎年彼らはたたかい、苦しみ、死んでゆく。森は無意識の底。獣たちは人の心に眠る原始のリビド=エネルギー


彼ら獣たちは「文化」をまなばない。それゆえ常にみずみずしいチカラ=リビドーを保ちつづけられる。

文化とは分化。分ける、そして区別し名付けること。識別こそが意識のはたらき。その繊細で高度な作用は人を自然から切り離す。


無意識の中、世界の果ての町で男は記憶をほとんどなくし、視力をうしなっている。太陽の光(意識の光)を受け入れることができない目。代わりに夢よみの能力を得ている。


皮剥ぎは門番、「境界」を守るゲートキーパー。原始の獰猛な無意識。どこか青髭、おそろしいアニムスのにおいがする。


影の意味がわからない。無意識世界での「影」とは一体なんなのだろう?

彼は皮剥ぎに引き渡され、ゆっくり弱り、死んでゆく。「彼」が死ねば夢よみの男はもう街を出、元の世界に還ることができなくなる。

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