ハムルビ #5
【残機 ??鐔�鐔э秀鐔� エラーコードnull 詳細不明・解析不能】
「み、ず……水が、欲しい」
オレの口はカラカラに干乾びて粘つき始めていた。
オレはいつまでここに閉じ込められるんだ。ここで目覚めてから何時間、いや、何日経った? 死ぬまでこのままは流石にゴメンだぞ。考えは言葉に成らずに胸の内で反響する。
オレの思考回路は時間を追うごとに淀み、どろどろに溶けていった。
空間そのものが歪んで見えているのは空腹のせいだろう。視界がかすみ、自分が目を開けているのかさえ
この部屋に閉じ込められてから、考える事を放棄するまでは実に早かった。熟考すればする程に腹の虫は増え、胃の中を喰い荒らした。全身が脱力し、動く気力が底から抜けていく感覚が全身を纏う。
そんなオレの耳に重量のある何かが動いたような音が届いた。
ガコン、と。
部屋を反響したその音はゆっくりと鼓膜に曳きながら静寂へと還元された。
間を置かずして微かな獣の臭いがオレの鼻腔を突いた。それが何なのか視認しようと閉じかけていた目を見開く。
──鼠だ。
そこには一匹の鼠が部屋の端を這っていた。
「あ、あぁぁ」
オレは部屋を駆ける鼠を同じ様に這いながら追った。
やっとの思いで手にした小動物と目が合う。潤んだ瞳がこちらを伺うように覗いている。
「美味しそう……」
ぶちぃ
オレは一切躊躇わずに鼠の頭に齧り付いた。
夢中になって口に頬張ったそれを奥歯で噛み砕いていると、斬首された鼠から血が滴り落ちた。
オレは鼠の頭に舌鼓を打ちながら、勿体無い、と漏れ出す赤い液体をずるりと口で啜った。
ぐぢぃ ぐじゅ、ぅじゅ こり、ごりっ
鼠とはこんなにも美味いものだったのか、と感動し一心不乱に貪る。
馳走は喉を潤し、胃は馳走の命で満たされる。
「……こんな訳のわからないまま野垂れ死んでたまるか」
僅かながらも体力の息を吹き返したオレは、血でベタベタになった口周りを腕で拭うと、鼠がどこからやって来たのかを探ることにした。
音がしたのは確かこっちだ、とオレは這うようにして今と逆の方向へ視線を移す。
そこには鏡台、ただし先程まで鏡が張られていた部分にはぽっかりと人が一人通れそうな程の穴が空いていた。
裸電球のか細い光が穴をより濃く鮮明に浮かび上がらせ、オレにはそれがまるで何かが大きく口を開けているように見えた。
「鼠はここから出てきたのか?」
オレは恐る恐る鏡台に近付くと、その周りをじっくりと観察する事にした。すると、ある一つ不思議な事象が確認できた。
この部屋の角に二つの接点を持つように立っている鏡台の裏側には、二等辺三角形型の空間がある。しかし、鏡台にできた『穴』はやはり穴でありその空間を無視するように奥へと続いているのだ。一切の光を全て呑み込むような黒をしたそれは、まるでブラックホールだった。
ポツリポツリと全身に鳥肌が立ち始め、本能が穴に恐怖する。
少し躊躇われたが、腕を通して中を確認すると上下左右がヒンヤリとした壁、言うなれば通路になっている事が分かった。どのくらい奥があるのかわからないが、微かに冷えた空気が流れ込んで来ており出口があるのではという淡い期待が芽吹く。
「通れる……よな」
オレは恐怖を押し殺してゆっくりと、だが確実に穴へと身体を這わせていった。
【正体不??明のウイ????スが侵入しました。管理責????者は直ち??.?.?ステムの復旧を開始??て下さ゜??????】
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