ハムルビ #3-2

 教室をでたものの、向かうべき教室を全く思い出せないでいたオレは、校内をうろついていた。友人であろう人物が置いて行ったノートの表紙には『情報生命(応用)』と黒のマーカーで丁寧に書かれてあった。裏表紙には名前らしきものが見られたが、酷く掠れていて読み取ることができなかった。

 ひとつ溜息を吐いてノートを一ページ目からパラパラと捲ってみる。

「あ? なんだこれ」

 不思議な事に、そこには何も記されていなかったのだ。

「あいつ、ノート間違えて置いて行ったんじゃ……」そう呟いて一番後ろのページを開くと、何やら文章らしきものが書かれていることに気が付き手を止める。

【スマートフォンを見ろ】

 ノートのど真ん中に、ただ一言だけそう書かれてある。

「……なんじゃこりゃ」

 ますます意味不明なノートに不信感を抱きながらも、先ほどスマホがバイブレーションしていたことを思い出した。

「どうしよう……取り敢えずゆっくりできるとこでも探そうか」

 そう独り言ちてノートを鞄に突っ込むと、再び歩みを進めた。

 しばらくフラフラと歩いていたオレは、気が付けば食堂前にたどり着いていた。中に入ると、適当な場所に移動し着席する。ふと、窓の外を見ると太陽が燦燦さんさんと輝いてこの世界を照らしていた。

「あー、授業サボっちゃったよー。そんなに単位ヤバかったっけ……オレ」

 独り言が周囲に溶け込んで消える。

 だだっ広い食堂には人っ子一人見受けられなかった。腹の虫が声を上げたので何か食べようかと食券を買いに席を立ったが、調理人の影は見当たらなかった。上の階へ行けばコンビニもあるけど面倒だなと思い、再び同じ席に座りなおした。一仕事終えたようにふっと息を吐くと、今度こそ鞄からスマートフォンを取り出した。

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