ハムルビ #3-1
【残機 4】
「──────ぃ──おい、おいって。もう講義終わったぞ!」
「んあ?」
ぼやける視界には、人の影が写っていた。
「……誰?」
どこかで見たことがあるようなないような、そんなシルエット。聞き覚えのある声、知人である事は確かだ。
「お前まだ寝ぼけてんのか。ちょっとは授業聞いてないとまた単位落とすぞ……。ここにノート置いとくから写し終わったら返せよ。じゃあ、先に行っとくからな」
誰かはそう言い残すと、その場を去っていった。
オレは、ぼやける視界がハッキリしてくると周囲を一通り見渡した。
向かって前方には大きなスクリーン。そのスクリーンを取り囲む様にして、長机と椅子が規則正しく半円を描きながらズラッと並べられていた。だだっ広いその空間は、昔通っていた大学の中央講義室だと視認できた。
──ん? 『昔』通っていた? 昔ってなんだ……あぁ、オレはまだ寝ぼけているようだ。次の講義は何だったかな。
『ヴー、ヴー』
ぼうっと考え込んでいると、どこからともなくバイブレーションが聞こえてきた。
「……ん、スマホ、どこにしまったっけ」
自分の右側に座らせている種種雑多な黒い肩掛けの鞄の中に手を突っ込んでガサゴソと音の出所を探っていると、入口の方からガヤガヤと大勢の人が入ってくるのが見えた。
「ヤバいな、次の講義始まるまでどのくらいだ?」
オレはスマホを探す手を一旦止め、教室を後にすることにした。
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