第46話 エピローグ

 そしてまた俺の魔法学園での新しい一日が始まった。


「起立ー、礼!」


 マリナが居なくなった後、学級委員に選ばれたカナリスが号令をかける。

 

 教卓に立つのはクザサ先生。


 ようやくレノルの残した毒魔法が消え、教師として復帰することが出来たのだ。良かった良かった。


 レノルが張っていた結界と学校に元々備わっている自己修復機能のおかげで、学校にもさほど被害は無かったし、壊れてしまった箇所もレノルが元通り復元した。


 学校の地下であんな戦いがあっただなんて、ほとんどの人は知る由もない。


「じゃあ次……マオ!」


 クザサ先生がいきなり当ててくる。


「えーっと、えーっと」


 しまった、授業を全く聞いていなかった。

 焦りながら教科書をめくっていると、隣に座っていたセリがトントンと教科書を指さした。


 首には黒い首輪が光っている。アクセサリーにしては派手だが、元々セリは派手なので、誰も気にする人はいない。


 当てられた箇所を無事に読み終えると、精霊が時計塔の鐘を鳴らす。お昼の時間だ。


「マオーっ、ご飯に行くわよ!」


 ルリハが教室の入口で叫ぶ。


「うん!」


 カナリスとセリと共に立ち上がる。


「あれ、セリちゃんも一緒なんだ?」


 女子生徒がセリに尋ねる。


「まー同じパーティーになっちゃったから打ち合わせも兼ねて、仕方なくって感じ?」


 不満げにポリポリと頭をかくセリ。


 こんな感じだが、戦闘では役に立つので、実技授業でも大いに助かっている。おかげで俺もこのまま行けば落第は回避できるレベルになりそうだ。

 

 学食に行くと、生徒会長と副会長が手を振っていた。


 マリナから毒を受けた生徒会長は、神殿でしばらく療養すると聞いていたけど、どうやら完全復帰したらしい。


「あれっ、二人とも、どうしてここに」


「いや、生徒会長がここの食事を気に入ったみたいでね。あんなに安くさいとか底辺の食事だとか言ってたのに」


 副会長が大きな体を揺らし豪快に笑う。


「うるさい、そんなことは言っていない」


 カツカツと靴を鳴らし、生徒会長は俺の方へと歩いてくる。


「私はただ、そこのお前に興味があるだけだ」


「えっ……僕?」


 会長は俺を手招きし、耳元で囁く。


「そうだ。カナリスの素晴らしさについて語れるのは、お前だけなのだからな。お前が居ないと私は退屈になる」


「はぁ」


 嬉しそうに食堂の椅子に腰掛けた会長は、隣の席を叩いた。


「ほれ、隣を開けておいたぞ。マオは私の隣に座るといい」


 真顔で言ってのける生徒会長。


「えっ!?」

「なっ……!!」

「はぁ!?」


 カナリスとルリハ、セリがそれぞれリアクションをとる。


「せ、せ、生徒会長!?」


 副会長も不思議そうに俺と会長の顔を交互に見やる。


「あ、そうそう。貴様には命を助けられたし、私とお前の仲だ。生徒会長ではなくシラユキと呼ぶといいぞ」


「だ、ダメだよシラユキさん。マオくんには……」


 カナリスが慌てふためく。


「そうよ。あんたマオのことあんなに馬鹿にしてたくせに!」


 ルリハも呆れ顔だ。


「おやおや、何やら楽しそうなことをしていますね?」


 そこへ現れたのはレノルだ。


 クザサ先生が復帰した後、今度は保健医がで倒れたので、レノルはまんまと保健医としてこの学園に居座ることに成功したのである。


「皆様、私のマオくんに何か御用でしょうか?」


 ニッコリと笑うレノル。


「私の……マオくん!?」

「や、やっぱりこの二人……」

「へ……変態保健医!」


 女子たちに動揺が広がる。こいつ、絶対わざとだろ。


「じゃあ、私もー」


 セリは後ろから抱きしめる。後頭部にデカい乳がこれでもかと押し当てられる。


「えー? だって私はマオの下僕だし、ショタコンどもから助けるのは当然っていうかー」


 俺の頭に胸を乗せ、ニヤニヤ笑うセリ。

 生徒会長は顔を真っ赤にした。


「私はショタコンじゃない!」

「私もよ!」

「僕も」


 何だかわけが分からなくなってきた。


「はぁ」


 俺はため息をついた。

 

 どうやらこの馬鹿騒ぎは、これからまだまだ続きそうである。



【完】










※1/15から『魔王様は落第寸前!』番外編の連載を始めます。フォローはそのままで!

※お星様で評価して頂けると作者が喜びます↓↓↓

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る