月のライン 6-4


 ナヤがキトにこの手紙を見せることを、ラジは悟っていたのだろう。


 キトなら、ナヤを支えてくれる、と分かっていて、セドにこんな手紙を書かせたのかもしれなかった。


 そのため、マリのことを記していない。


 ナヤがキトに打ち明けられるように、セドに、マリのことを言わなかったのだ。


「ナヤ、大丈夫」


 キトは手紙をナヤに返しながら、しっかりとした声で言った。


「このことについてはラジに任せて。町長は、ラジが調べに来てくれる。きみから調べに行こうなんて、考えちゃダメだよ」


「どうして、キト。ラジって誰なの?」


「ラジは僕の……」


 言いかけて、言葉につまった。


 僕の、ボディーガード?


 キトは努めて明るい顔をし、ナヤに続けた。


「ラジは僕の友達だ。ねえ、それよりナヤ。今度のノエルの夜に、ナヤを誘いに来てもいいかな。一緒に町を歩いたり、夜のゴンドラに乗ったりしようよ」


 ナヤの目が心なしか潤んでいるような気がした。


 キトはポケットからハンカチを取り出そうとして、手を止めた。ロイに預けたままだった。


 ナヤは奥の間へ行ってしまった。


 あっ、と思って追いかけようとしたら、すぐ戻ってきた。


 手に細いペンを持っている。


「ありがとう、キト。約束ね。兄さんにも、ノエルの夜は大丈夫だ、キトがいるからって、書いておくね」


 セドからの手紙を握りしめ、ナヤは明るくふるまった。


 そんなナヤを前にして、キトは自分の頬が、熱くなっていくのを感じていた。


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