月のライン 6-3


『ナヤへ。


 家の者が心配しているだろうから、と、警察は僕にこの手紙を書くよう、促した。


 携帯電話は調査として没収された。


 ナヤ、僕は今、警察署の牢にいるが、心配しなくてもいい。


 みな、大人の対応をしてくれている。乱暴な目にはあっていないよ。


 あの日、僕は花を届けるために、本土に行ったが、受取人が、いつも待つ場所にいなかった。


 どういうことだろうと思っていると、島から僕をつけてきたという、ラジという人物に会った。


 その男につかまれて、僕は今ここにいる。


 あの花は幻想花だったんだ。


 僕は何も知らずに、島から本土への掛け渡しをさせられていたんだ。


 洗いざらい、僕は喋った。でも知っていることはこれだけ。


 町長が、僕の雇い主。自分の店の花だと偽り、届けるだけで、金をくれていたということ。


 本当にそれだけしか知らないんだ。


 取り調べのために、僕はあと数日間、この署にいなければならないみたいだ。


 残念なことに、ノエルの夜にも、帰れそうにないらしい。


 近々、警察の調査員とラジが、町長を洗いに行く、と言っていた。


 もしもナヤ、こんな兄を許してくれる気持ちがあるなら、この封の裏に書いた住所に、手紙を一通、送ってほしい。


 きみの兄より』


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る