第7話 さっちゃんさん

 しかし、何日経っても、みんな「さっちゃんさん」と呼ぶ。段々と、さっちゃんさんと呼ばれることが心地いいような気もしてきた。


 ジョニーの配信が始まったので入室すると「さっちゃんさんこんにちは」と呼ばれる。


「何処のルームに行ってもさっちゃんさんって呼ばれるのよねぇ。さっちゃんでいいのに」と思わずそんなコメントをしてしまった。


「さっちゃんがいいの?じゃあこれからさっちゃんって呼ぶね」


「さっちゃんさんでいいよ笑」


 次のジョニーの配信のときに入室すると「さっちゃんさんこんばんは。あっまたさっちゃんさんって言っちゃった。さっちゃん」


 もう呼ぶ人も、さっちゃんさんと言うことが癖になってきてるのだと思った。


 久保田くんの配信にはなかなか行けなかった。夜中、朝方の配信が多いのだ。大学が終わると、バイトに行き夜中の2時まで働いてるとのこと。


 学校が休みの日に、珍しくお昼に配信があったので入室して、地元のことをたくさん話していた。すると、いつものように、久保田くんが入室してきた人の名前を呼びはじめた。


「直人さんこんにちは。あっ同じくタレント活動されてる方なのですね」


 えっ、直人くん?なんでここに入室したの?偵察なのかな。


「直人くーん」


 呼んでみたけれどコメントはない。もう退室したのだろうか。そういえば、拓也のルームにもきていた。


「ジョニーさんこんにちは」


 えっジョニーまで入ってきたー気まずい。とても気まずい。


 その後直ぐにジョニーの配信が始まったので入室した。


「さっちゃんこんにちは。寒いよね」


「ジョニーは北海道出身なのに、やっぱり寒いの?寒さに強いのかと思ってた」


「北海道は暖房いれるから家の中は寒くないんだよね。さっちゃんは何処に住んでるの?」


「福岡だよ。だからさっきテンテンテン」


「えっなになに?気になるじゃん」


「さっき、他のルームでジョニーが入ってきた。あの人も福岡の人なのよ」


「そうなんだね。僕なんであそこに入ったのかよくわからないんだよ。あっさっちゃんだって思ったよ」


 ジョニーは嘘はつかない人だと思う。わたしも嘘はつきたくない。年齢以外は……。といっても、何歳です、とは言っていない。聞かれないからわざわざ言う必要もないだけだ。拓也のルームで拓也が若い子から、おじさん、と呼ばれていて、じゃあみんなで年齢言おうかと拓也が言ったときに「やめて笑」と言ったことはあるが。


 わたし自身は10代でもなんでも対等に話すことのできる人だ。精神年齢が低いので、Twitterでも高校生とよく思われる。だけどはじめて話す人とは、相手が何歳でも敬語になることがあるので、高校生の子から「タメでいいよ」と言われたことがある。自慢にならないけれど。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る