第5話 拓也の言葉
最終的にわたしは4人の配信者の初心者のイベントを応援することにした。
いかし、これはかなり大変なことだった。当たり前である。彼らは少しでも順位を上げる為に、毎日何度も配信するのだから。
ひとりが配信を終えると、また他の人が配信する。星は投げてしまったので残っていない。
星がないのに配信を観ることはできない。いや、できないのではなく、応援できないという意味だ。星がないのだから。星がなくても話はできる。だけどそれでは配信者は不満だ。星をたくさん投げてくれるファンが来てくれることが一番嬉しいのだから。
イベントの期間は20日間。配信者には短く感じるかもしれないが、リスナーにとっては凄く長い。毎日毎日何度も何度も、星を集めておかなければならない。
4人全員を応援することはできない。1人に絞らなくてはいけないのだと思った。
だけれど、誰に絞ればいいのか迷った。1人に絞れない、どうすればいいのかわからずにいた。
拓也の配信が始まった。拓也は、出身が同郷ということとでフォローをした。なかなかのイケメンでトークも面白い。イベント中なのに、星を投げるのを忘れて、お喋りに夢中になった。やはり共通の話題があるのはとても楽しいのだ。
入室してわたしはこうコメントした。
「拓也くんはイベントで1位を狙ってますか?」
「もちろんです」
「だけどお喋りばかりしてて、今は拓也くんは3位にいるけどライバルは必死よ。みんな1位になりたいんだから」
「俺はね」
(何よ)
「他の人のことなんてどーでもいいんだよ」
(どういうことよ)
「1位にはなりたい。だけど星を投げろとかそんなこと俺は言わない」
(何かっこつけてんのよ。星を投げてもらわないと1位にはならないのよ)
「言ってる意味がわからない。1位になる為にやってることはなに?」
「トーク!トーク力で勝負してるよ」
(はぁ?もう既に常連になってる人とトークで盛り上がっても仕方ないでしょ。何言ってんのこの人)
そのとき、常連の人からコメントが上がった。
「わたしは拓也くんに相談に乗ってもらってとても助けてもらった」
「わたしもたくさん話を聞いてもらった」
わたしはそのときに、イベントは星投げすること、としか思っていなかったことに気付かされた気がした。大事なことは1位になることではない。
それと同時に、拓也から聞きたかったのは、星投げをして応援して欲しいという言葉ではなく、まさに拓也が言った言葉を求めていたことに気付いた。
「わかった。拓也の気持ち凄く響いた。わたしは拓也を応援するよ!大好きだよ」
「大好きとか……みんなも……」
そう言って拓也は涙を流したのだ。
「えっ、泣くとか可愛いんだけど」
常連の絢香がそう言った。
「ありがとう拓也さん。いつも相談に乗ってくれて」
真紀もコメントした。
画面からいなくなる拓也。
涙目で画面に現れて「ここでこんなに真剣に話したのは初めてだよ」
「拓也くんありがとう」
「拓也くんについていく」
みんながたくさんコメントして、また拓也は涙目になる。
ここは最高のルームだと感じた。
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