第4話騎士の鏡 クロム
私の膝の上でノアはとても安心した顔で寝ている
魔物との戦闘経験がない彼にとって、初めての戦闘は彼の勝利で幕を閉じた
初めて見る魔物 怖かっただろう 逃げ出したかっただろう 痛かっただろう
それでも彼は諦めずに、闘った 彼はこれから他の誰よりも強くなる その行く末を見届けたい
今は弱い彼が、強くなるその日まで私は強くあると決めた
「いつも貴方を 守れるように」
眠る彼を背負い森を歩いた
夜になってしまうと魔物が大量に現れる
いくら私でも彼を背負ったまま戦うのは危険だ 少し急ぐ
もうすぐ森を出る そう思った時 前方にゴブリンの群れが現れた
「ちょっとの間我慢してね すぐに終わらせるから」
彼を木にもたれさせて 私が剣を抜こうとした時 奥から男性の大声が聞こえた
「モルドレッド遠方調査隊!魔物を殲滅しろ!」
数人の男がゴブリンの群れを次々になぎ倒して行く 群れが全滅するまで時間はかからなかった 剣を収めノアをもう一度背負い男達を見る
「あれは… 王都騎士団 何故こんな所に…?」
その中の隊長と思われる男性がこちらに近ずいてきた
「お怪我はありませんか?」
「えぇ、大丈夫 危ない所をありがとう」
「それは良かった 私はモルドレッド遠方調査隊隊長 クロム・モルドレッドと申します」
非常に丁寧な話し方で誰からも好かれる好青年そのような印象を感じた
「ミラよ 王国の騎士様が何故こんな所に?」
「素敵なお名前で 王都のはるか南に遺跡が出現したとの報告を受けたので調査をしていた帰りです 貴女こそ何故このような場所に?
それに背中の彼は…」
「もう少し砕けた話し方でいいわ 疲れるでしょう すぐそこのカペラ村に行く途中だったの彼は魔物との戦闘で疲れて眠ってるだけよ 調査の結果を詳しく 聞かせて貰えないかしら」
運がいい 助けてもらった上に 地上世界での遺跡の出現 その調査に行っていた騎士クロム
この男と話せばなにか手がかりが掴めるかもしれない
「ありがとうそうさせてもらうよ
僕達もカペラ村に少し滞在しようと思っているんだ 夜も遅い一緒に着いてくるといい
それで遺跡のことなんだけど、今回の調査では何も得られなかった 何故そんな質問を?」
何も得られなかった だがノアと一緒に行けば何かわかるかもしれない彼が起きたら話してみよう
「そう…いえ なんでもないわ そうねご一緒させてもらうわ」
「そうか、気になるなら地図を渡しておこう
今度行ってみるといい 景色の綺麗な場所だ
彼もきっと喜ぶよ さぁ乗って村までもうすぐだ」
「ありがとう優しいのね 貴方…何か勘違いしてない?私と彼はそんな関係じゃないわ
それじゃ お邪魔します」
クロムは私とノアを恋人か何かと勘違いしているに違いない 私と彼は断じてそのような関係では無い
「自分に厳しく 人に優しくが僕の騎士道だからねこれくらいは当然のことだよ
そうなのかい?それは失礼お似合いだと思うけどね」
何気ないお喋りを続けていると村に着いた
「僕は村に滞在許可を貰ってくる 君達はどうする?」
「妹がいるはずだから会いに行くわ
今日の事はまたお礼させてもらうわね
それじゃまた」
彼を早くちゃんとした寝床につかせてあげないといけないし、妹にも遅刻の謝罪を 祖母にも天人様の事を聞かなければならない やる事はたくさんある
「そうか お礼なんていいよ だがまた何かあればゆってくれ 力になろう」
笑顔で手を振る彼を背に村の中へと足を進めた するとものすごい勢いで前方から人が走ってきて私に飛びついた
「おねぇちゃん なんで見に来てくれなかったの!?約束してたのにバカバカバカ!」
人の正体は妹のセラ セラは顔を膨らませて
怒っているがとても可愛い最高の癒しだ
「ごめんなさい 少しトラブルがあって…
代わりになんでもお願いを聞くわ 許してくれる?」
「もぅ〜!今回だけだからね1日中剣の稽古つけてもらうんだから!
トラブルって背中の男の子の事?怪我してる…早く応急処置しなきゃ 行くよ!」
許してくれるそうで何よりだ1日中稽古は骨が折れるが妹と過ごせるのなら全然構わない
セラに連れられ民家へ急ぐ 走る彼女の姿はとても子供らしく可愛い
「おばぁちゃん お姉ちゃんと怪我人がきたよ 応急処置してあげて!」
「おぉ、ミラかい よく来たね ゆっくりしていきなさい その男の子はこっちに寝かせて」
久しく入る祖母の家はとても懐かしく感じた
床に敷かれた布団に彼を下ろす 2人には話さなければいけないノアの事を
「こりゃまたひどい怪我だね とりあえず傷には薬草塗っておくさね」
祖母の応急処置は見事な手際だ 昔は王都で働いていて 戦場の女神と呼ばれていたとかなんとか
「それにこの羽は天人様かい 見るのは久しぶりだね また若い子が降りてきたもんだ」
見るのは久しぶり 驚愕の言葉を耳にする
確かに昔から妙に詳しいとは思っていた本に書いてあること以上のことをいつも話してくれていたが まさか実物を見た事があるとは思わなかった
「おばぁちゃん 天人様に会ったことがあるの? 実はこの子 空から落ちてきて、帰れないみたいなの 何か知らない?」
横に視線をずらすと 大口を開けてほうけているセラが目に入る それはそうだ話についていけるわけが無い 後でしっかり話そう
「ちっちゃい頃にねよく遊んだものだよ
この子は落ちてきた衝撃で凄く羽が傷ついてる だけどこの傷は私達じゃ癒せない
ミラ 遺跡に行きなさい 行けばわかるから」
やはり遺跡に行くしかない 移動手段が必要だ
だが確保するのにも1度王都まで行かなければならないここから王都まではかなり距離がある クロムに相談すれば連れていってくれるかもしれない
「ありがとう おばぁちゃん 少し出てくるわ」
「行ってらっしゃい セラにはおばぁちゃんから話しとくからね」
家を出るとクロム達は寝床を作っている どうやら滞在の許可は降りたようだ
「クロム 少し相談があるのだけれど 移動手段の確保に王都まで行く用事が出来たわ
もし良ければ連れていってくれないかしら」
「やぁ ミラか
それぐらいならお安い御用だよ ただ出発は明日の夜だそれでも大丈夫かい?」
「えぇ、全然構わないわ 彼が起きたらお礼もさせなきゃいけないし」
「任せてくれ お礼はいいと言っているのに…
じゃあ僕と友達になってくれないか?君とはいい友好関係を築けそうだ それでチャラってことで」
クロムは手を差し出す
本当に爽やかで笑顔で人当たりのいい好青年まるで騎士の鏡だ
この男と親しくしておいて損は無い
「えぇよろしくクロム」
1日に2回も別の人物と握手をすることになるとは思っていなかった
「ミラ…」
振り向くとそこにはノアが立っていた
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