第3話ノアとミラ
「ノア・ラムベルクだ」
これから手がかりを探してくれるという彼女に、俺は手を差し出した
正直彼女の言っていた常識は知らなかったがそれもこれから彼女に教わればいい
「 ノア…いい名前ね
私はミラ・フォルティニ 」
そう言ってミラは少し笑った、初めて見る彼女の笑顔に俺は少し見とれてしまう
ミラは俺が見とれていたことに気づいたのか不思議そうな顔をしてこちらを見ている
「どうしたの?そんなジロジロみてちょっと恥ずかしいわ…」
照れくさそうにミラは顔を伏せる
それもまた素敵だがずっとこのやり取りをしているとキリがない何より理性がもたない
「ちょっとボケてただけだよ
それで帰る手がかりなんだけど、何からしたらいいかな」
「ホントに?まぁいいわ 隣の村に天人伝承について詳しい人がいるの そこに行きましょう
成人祭 もう終わったかしら…」
「じゃ早速出発だな!」
ミラの言う人物への期待を乗せて足を踏み出す
グキッ
とても嫌な音がした どうやら足を挫いたようだ痛いホントに痛い超痛い俺は蹲る
「貴方さっきから怪我ばかりしているわね 足踏み外して落ちてきたりまた落ちたり ドジなのね」
ミラが心配そうな顔でこちらを見ている
痛みを我慢して立ち上がり歩き出す
「昔っからなんだよ… それよりさっき言ってた成人祭ってなんだ?」
「18歳の子達をまとめて祝う祭りよ
貴方が落ちてきたおかげで間に合わないかもしれないけど…この森を抜けたらすぐよ」
「そ、そりゃ悪かったな……」
少しの間沈黙が続く 気まずくなり話をしようとした時ミラが先に口を開いた
「貴方が言っていた外の世界とはなんなの?
ここ以外にも世界があるの?」
「絶対とは言えないけど、ある俺はずっと探してる今日……やっと見つかりそうだったんだ」
「そう ホントにあるのなら行ってみたいわね」
ミラは落ち着いた様子で話を進めている 出会った時の慌てようがまるで嘘のようだ
少し歩いていると前方に影が見えた人ではない俺の知らない見たこともない影が ミラも気づき立ち止まる
「魔物… この森にもでるなんてね ノア構えなさい」
「魔物って?あの魔物か!?」
「……?知らないの?」
少し前に近所の人に借りた本に載っていた魔物実際には見たことは無い
「知らねぇよ!上には魔物なんて出ないから!見たことも無い!」
「一応聞くわ 貴方闘えるの?一応武器は持っているようだけど」
「魔物とは闘ったことないけど まぁいけるだろ…」
「不安で仕方ないわ……敵は3体 ゴブリンが2体とオークが1体ね 私が後ろの2体を片付けるから貴方はオークをよろしくね」
初めて見る魔物 怖さで足が震える
だがミラがこのように落ち着いているのだ
彼女の前で逃げるような真似はしたくない
やるしかない俺ならやれる自分にそう言い聞かせている間にミラは飛び出した
まずは一体 守る隙すら与えずに切り捨てる。
速い彼女の剣技に目を奪われる
自分の今まで見てきた物とは全然違う
もう一体がミラを見て構える 盾の前では彼女の速さも意味は無い 少し距離を取り
彼女は手を前に出し魔法を唱える
「風の刃よ敵を切り裂け 風刃斬撃魔法
"ウィンドカッター"」
ミラの手の前の魔方陣から鋭い風が放たれる
「グァッ…」
ゴブリンの体は切り刻まれたゆうなればオーバーキルって奴だ
「さぁ次は貴方の番よ 早くしないと置いていくわよ」
彼女は剣を鞘に収めた どうやら手伝ってくれる気はないようだ
オークは狙いを俺に定め襲いかかってくる
懸命な判断だ俺もオークの立場ならそうする
だが今はいい、頼むから向こうに行って欲しい
「ブォァァァア!」
オークが叫ぶ 耳が痛い
「やる気満々じゃねぇか…… 行くぞデカブツかかってこい!」
愛用の短剣を取り出す オークは武器を持っていない 臆せず行けば勝てるはずだ
大きく振りかぶった拳が迫る
全然避けれない速度ではないミラの剣技を見たあとでは止まって見える
「当たるかよ!」
そう言って俺は豪快にぶっ飛ばされた
「ガァッ…!! 体が…ハァ…思うように動かねぇ…」
魔物との戦闘経験などもちろん無い
仕方の無い事だと思う
こちらを見てため息をつくミラの姿が視界にうつる 呆れた顔で剣を抜く
もういいという事だろうか 彼女が倒してくれるならもう痛い思いもしなくていい
「見てられないわそこで指くわえてみてなさい」
このままでいいはずがない
「やめろ!!!!!」
俺は叫ぶ 痛いのは嫌だ死ぬほど嫌いだ
「俺がやる…!!!指くわえてみてるのはあんただ!!」
だが彼女にこれ以上かっこ悪い姿を見せる訳にはいかない
「たったの1発だ…… まだ終わってねぇよ」
「そう……せいぜい死なないようにね」
彼女の前ではかっこいい男でありたいその想いが俺を奮い立たせた 立ち上がる まだ身体は痛い
「しっかり見てろよ 名誉挽回だ今度はこっちから行くぞデカブツ!」
まずは一閃オークの腹を切り裂く
「グォッ…」
傷は浅い 振りかぶる拳を避け反撃する
ゴブリンの持っていた剣を拾いオークが襲いかかってくる 正直もう痛みが限界だ 次で決める
「お前はもう俺の姿を捉えられねぇ!!さっさと倒れろ!」
オークの懐へ入り視界から外しその隙に連撃を叩き込む何度も何度も
オークがよろめく 背後に周り首を獲るこれで最後だ
「俺の勝ちだ あの世で待ってろデカブツ!!」
オークを倒した それと同時に俺の体も倒れた
もう体は動かない ミラがこちらに歩み寄る
少しでもカッコイイ姿を見せられただろうか
弱いままじゃだめだ 俺はこれからもっとつよくならなければいけない
いつか彼女を守れるように
目を閉じる前とても優しい手が頭を撫でた
「よく頑張ったわね お疲れ様
弱い癖に……ちょっとカッコよかったわよ 少し休みなさい」
「よかった…」
安心して俺は目を閉じた
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