第2話二つの世界
空から突如落ちてきた桃髪の青年 すぐさま駆け寄り身体を揺する 息はあるが、意識はない
私の頭にいくつもの疑問が浮かぶ
何故落ちてきたのか 何故生きているのか
そしてこの背中にある羽
その姿はまるでいつも見ている御伽話の天人そのものだった
「ん…… 麻婆豆腐!!」
ゴンッ
青年が飛び起きて、丁度顔を覗き込んでいた私の頭に、勢い良く頭がぶつかる
「痛い…目を覚ましたのね」
「悪い悪い! 俺昔から石頭でさ!」
「そうなのね……って今そんな事はどうでもいいの!貴方には聞きたいことが沢山あるわ!なんで落ちてきたの!?なんで生きてんの!?その背中の羽は!?貴方は一体何者なのー!!?? ハァ…ハァ……コホンッごめんなさい少し取り乱してしまったわ」
柄にも無く声を荒らげる私を見て青年は唖然としている
「そんな急にいっぱい聞かれたら困っちゃうよ…ハハ …順番に話そうか なんで落ちてきたかっていうと、遺跡調べてたら足踏み外しちゃってさ もうそれは勢い良く落ちたよ」
「遺跡調べてて落ちてきた…?」
この森の上には青い空と雲しかない遺跡などあるはずがないこの男は何を言っているのか困惑する私を置いて、青年は着々と質問に答える
「普通ならあんな高さから落ちたら死ぬんだけど…ギリギリで魔法唱えたらなんとか生きてたよ」
もうこの男の言っている事に理解が追いつかない 魔法の勉強は日頃からしている記憶力もいい方だ
だが空から落ちて無事で居られる魔法など私は知らない
「最後にこの羽の事だね 確か下界には御伽話として伝わっているんだったね
この羽は天の人の証」
「俺は ーー 天人だよ」
「聞こえない」
「だから天…」
「うるさい聞こえてる!ありえない!
だって天人様はお話の中の人で……」
青年の口から放たれた「天人」という言葉
ずっと小さな頃から読み聞かされていた物語
実在するはずのない存在
だが 羽の生えた桃髪の天人がそこにいた
「信じれないのも無理はないかもな…
そろそろ行くよ あんまりゆっくりしていられない 」
青年は立ち上がり大きく伸びをした
「外の世界への手がかりも…ようやく見つかりそうだしな……
気をつけて帰れよお姉さん!じゃ!」
「ちょっと待って!貴方にはまだ聞きたいことが…!それに今外の世界って……
呼び止める私の声はもう青年には届いてない
軽快に木々を飛び移り 青年は大空へ羽ばたいた
再度地面に体が叩きつけられる音がした
青年は痛さでうずくまっている
「イタタ… なんで落ちたんだよ俺……
落ちた衝撃か…?これじゃ帰れねぇぞ…」
「だ、大丈夫……?」
「大丈夫……じゃないな……
それよりお姉さんに折り入って頼みがあるんだが…」
「何?」
「俺は下の世界の事をあまり知らない
だから帰る手がかりを一緒に探して欲しい」
青年は真剣な眼差しでこちらを見る
此方の事など置いてどんどん話を進めるなんて自己中心的な男だ
「いいわよ 一緒に探してあげる
下の世界の事も教える代わりに
私に上の世界の事を教えなさい」
上の世界の事を知れる機会などこの先ないだろうそれに私は自分にメリットのないことはしない
「本当か!?助かる!! じゃ…これからちょっとの間よろしくな!お姉さん名前は!?」
とても嬉しそうに青年は笑うその姿は全然私達と変わらない
「ええ…よろしく 人に名前を尋ねる時はまず自分から名乗りなさい常識でしょ?」
自己中心的で常識知らず 本当にこの男が私の憧れた天人様なのか
「そ、そうなのか…?それはごめん…
俺はノア ノア・ラムベルクだ」
青年は少し困った顔をした後 満面の笑みで手を差し出してきた
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