その2
「よくわかんないけど」
ブッ壊れたドアノブと、周りに落ちたネジやらよくわからない部品を拾い集めながら「ここは知らない内に壊れてましたよ」と言えるための隠蔽工作をしている最中、唐突に彼女は切り出した。
「「黙っててあげるから友達になって」とかそういうこと?」
「友だち…友達かー」
改めて彼女に出した条件の「一緒に昼ごはんを食べる」ということが、どんな事かを考える。
正直、とりあえずこの子を側で見る何らかの条件が欲しかっただけで深く考えた訳じゃない、かと言って彼女の友達になりたかったのかと言われると
「友達に……なりたいのかなぁー」
「えぇ…なんなの……」
極端な話、そばで見ているだけでいい。けど日常的に彼女の近くにいたいかと言われるとまた違う、歪んだ話だけど、屋上にいる限り「弱い彼女」が見られる気がしたから「昼休みの屋上での昼ごはん」がいいのだ。
ただまあ彼女も意味がわからないだろうなとは思う。
「……まあ、こんな感じかな」
「…そうだね」
外れかけたネジに適度に歪んだドアノブ、元から割と周辺が錆びてたのもあって「ちょっとなんか壊れちゃってましたね」と言い訳できる範囲内だと思う。
そもそもそうそう人も来ない、今回だってなんやら学習内容が変わるだかで数年ぶりに屋上の鍵を出してきたくらいだ、まずバレるかどうかも怪しい辺りがある。好都合ではあるけども。
「じゃあ」
あーだこーだと隠蔽工作を働かせているうちに、昼休みはもうすぐ終わりで
「また明日、ここでね」
「ん、じゃあね変態優等生」
「待ってなにその呼び名」
「間違っちゃないでしょ」
「んん……」
確かにまあ言い返せない、そうこう唸る間に予鈴は鳴り「私先いくね」と階段の手すりを器用に滑りながら、金髪を揺らして階下に消えた。
微妙な気分のまま階段を降りていく途中に、ふと思い出す。
先生に言われた用事、忘れてた。
特別には足りない @kamichu
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