第2話 バーチャルな死

 とある休日、寮の自室で寝ていると学友に起こされた。


 と思ったら大きな体育館に居て、仰向けになった自分の足を、審判が持ち上げていた。

 起き上がって審判に手を引かれ、コートの中央へ。審判はコート上に居たもう一人の選手の手も掴み、そちらの手を上げた。

 負けたのだ。

 記憶がだんだんと戻ってくる。

 こちらの白帯と違い、相手の白帯はボロボロで、キャリアが長そうだったこと。

 意外といい勝負が出来ていたこと。

 押さえ込みに行ったら変な技を食らったこと。

 意識を失い、六年前に意識がとんだ瞬間のことは今でも思い出せないが。


 試合後、同じ道場の選手が別の会場でMMA(総合格闘技)の試合に出ていたので応援に行くと、滅多に会えない道場の代表が居た。

「なるほど、つまり君は今日、バーチャルで死んだわけやね」

 試合で絞め落とされた話をすると代表はそう言った。

 自衛隊徒手格闘の、ちょっと腹や頭をタッチされただけで死んだことになる一本とは違う。柔道のように背中から転がるだけで死んだことにされる一本とも違う。

 剣道や銃剣道での、「そりゃ死ぬわ。一本だわ」という一本がブラジリアン柔術の特性であると、その日体感できた。

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