第25話 サッカーの楽しみ

僕は、ジュニアサッカーの練習が楽しみで、学校は山田先生の授業が受けられなくなってしまったので、退屈でいつも窓の外を見て過ごしていた。


そんなある日、僕はレギュラーに選ばれたのだ!来月には練習試合もある。


僕はまだジュニアのチームに入って数か月だったので、サッカーのルールだって覚えたてのような状態のヒヨコさんだった。


そんなヒヨコ状態の僕を、黒沢コーチは試合のレギュラーに選んでくれたのだ。

僕に、チャンスを与えてくれたのだと思う。


僕は、凄く有頂天になって、とても嬉しかった。

スポーツで試合に出れるなんて、すごく緊張するけどワクワクしてくる。


僕は、凄く嬉しい気持ちで、自転車を走らせながら、インコさんになんて知らせようかな。なんて考えていた。


家に帰ると、インコさんが何やら2層式の洗濯機を業者さんみたいな人達に頼んで、外に運び出している所だった。

どうやら、新しい洗濯機に買い替えたようで入れ替え作業をしていたようだ。


僕は、とっさに


「だめ!2層式洗濯機は大事なんだよ!」

と洗濯機に駆け寄り、洗濯機を運び出す業者さん達の邪魔をした。


「俊、もうその洗濯機は古いから、買い替えるのよ。」


「やだよ!この洗濯機には、、、」


「この洗濯機には、、、」


(スライムさんがいるんだよ、見えないけど隠れているんだから)


でも、そう伝えるわけにもいかず僕はとっさに


「この洗濯機じゃないと、2層式じゃないと僕の汚れた服が落ちないんだよ!だからこの洗濯機は必要なんだよ、だから捨てちゃだめなの!」


そう駄々をこねる僕をみたインコさんは 少し困ったような顔をして


「そうね。確かに2層式のほうが、泥汚れは落ちるとは言うのよね、、、それならその2層式洗濯機はお外に置きましょうか。」


危うく僕の第2の揺りかごが、飲み込まれてしまった洗濯機が捨てられる所だった。


僕はあの水色のタオルケットをインコさんが洗濯機に入れてしまった時から


たまに洗濯機のフタを開けては、スライムさんがいないか?ミントの妖精がいるんじゃないか?ってフェイントでフタを開けてみたり、いないいないばぁ~などしてみたりしたけれど、姿は見せてくれなかった。


それでも、この2層式洗濯機がいなくなるのは 嫌だった。


インコさんは、半ば呆れたような顔をしながら


「これからは、俊が汚れ物はこのお外の洗濯機で洗ってね。」


うん、もちろん。僕だけの洗濯機になるなんて好都合だ。


インコさんは、僕の事を 相変わらず変な所がある子っていう目で僕の事を見ていたけど、今更、気にならなかった。


あっ、僕はインコさんにレギュラーに選ばれた事を 言うの忘れてた。


「僕ね、試合に出る事になったんだよ~。凄いでしょう?」


「え?本当?凄いじゃない!ご先祖様にご報告しなきゃ!」


というと、慌ててインコさんは、仏壇に向かって何やら報告をし始めた。


「え?そんなに凄い事?」


そっか、内向的な僕がスポーツでレギュラーに選ばれるなんてご先祖様に報告するほど凄いことなんだね?






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る