第22話 土器の事
僕は、"歩く電卓さん"の帰宅を待った。
そんな日に限って"歩く電卓さん"は残業なのか帰りが遅かった。
僕は、玄関が開く音を聞いて、待ちきれずに玄関まで走ってしまった。
「父さん、お帰り!今日は遅いね、疲れてる?」
「お出迎えか、今日は残業じゃなかったんだけど外で部下と飲んできたんだよ。」
するとインコさんが、しゃしゃり出てきて
「え?夕ご飯いらないの? それなら電話くらいしてよ。。。」
と不満そうに、父さんの上着を手に取り、しまいにいってしまった。
「いや、お茶漬けくらい食べるよ。」
という父さんに、インコさんは
「いいのよ無理しなくて。」
と食卓に並べているご飯茶碗などを片付け始めた。
「父さん、見せたい物がるんだ。」
と僕は、待ちに待った土器を後ろでに持ったまま父さんの近くに近寄った。
「ん?なんだ?何を見せたいんだ?」
と父さんは、お茶漬けは食べますよ。という合図のように食卓に近寄って、食べる準備を始めた。
僕が、父さんの近くにいるのに、もったいぶって見せないでいるとインコさんが
「俊、なんなの?夕方からソワソワして、何をもったいぶってるの?」
「じゃーん!これなんだ。凄いでしょう?」
と僕は自慢気に食卓に、僕の土器を置いた。
「土器か、凄いな、これどうしたんだ?」
と"歩く電卓さん"は、ちょっと酔っている様子だが、眼鏡の奥の瞳が興味を示していた。
「今日ね、学校の課外授業で、古墳で僕がみつけたんだよ!」
「え?本当?凄いじゃない!それでソワソワしてたのね。」
とインコさんが 突っついてくる。
「ほう、それは凄いな、これは縄文土器だな。こうやって約1万6000年前から約2300年前の物を発掘できるなんてすごい事だぞ。」
「そうなんだよ、クラスでね2人だけみつけたんだよ。」
そう僕は自慢気に話した。
するとインコさんが
「俊のクラスは5クラスに分散して、最初はどうなる事かと思ったけど、今の山田先生がとても合ってるみたいね。良かったわね。」
「そうなのか、良い先生に出会えて良かったな。土器も凄いぞ!」
と"歩く電卓さん"は、喜んでくれた。眼鏡の奥の瞳も喜んでくれていた。
僕は、時間も遅いので寝る事にした。
両親のそばを離れる時、二人の会話を聞いてしまった。
「俊は、6年1組に入ってから、とても明るくなったわね。」
「サッカーも始めた事も良かったみたいだし、元気になって良かった。」
「最近、自分の意見もはっきりと言うようになったし、ワンパクで服も汚してくるしね。」
「それが、子供らしくて良い事だよ。」
僕は、子供らしくなってきたんだな。って思えて嬉しかった。
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