第21話 土器発掘

6年1組の仲間達は、古墳探求をした後

さっそく土器の発掘を始めた。


僕は、本当に土器なんてみつかるの?

もしみつかったとしても、先生が僕たちを連れてくる前にこっそりと土器を埋めているんじゃないの?


なんて思いながら、遥斗と一緒にスコップや熊手で土の地面を掘り起こしてみた。

アサリの潮干狩りのように、いろいろな場所を掘り起こしてみたけれど、なかなか土器は出てこない。


そりゃそうだよね。そんな簡単にみつかるわけはないよね。。。


そうこうしているうちに、第一発見者が声をあげた。


「あったー!土器があったぞー!」


6年1組+6年5組の8人は、みんな第一発見現場に押し寄せた。


「えー?本当に? 凄~い! 土器って本当に眠ってるのね。」


そんなざわつきの中から、山田先生はその土器を手に取り じっくりと土器を見ていた。


「これは、深鉢形土器だな。よく見つけたな~。凄い凄い。」


山田先生は、そう言うと その塊を画像に収めた。


僕も土器が見つけたくなった!


僕は、必死で闇雲に湿った土を掘り返していたけれど、なかなか土器はみつからない。そこで僕は、よく考えてみた。


昨年、家族3人で潮干狩りに行ったときには、なかなかアサリがみつからなくて

インコさんが一度アサリがいる場所をみつけてからは、そこの近くを掘り起こすとアサリが出てきた事を思い出した。


もしかして、土器もアサリと同じように、近くにあるんじゃないか?


そう思った僕は、第一発見者が発見した近くを掘り起こしはじめた。

5か所くらい掘り起こして、まるでモグラが通過した後のような状態になった土地は、もう掘り起こす場所がないんじゃないか?と思うほどの状態になっていた。


山田先生も、そろそろ学校に帰るぞ~。と遠くで言い始めているのを聞いて焦った。

僕は聞こえないふりをして必死で土を開拓していた。


そうこうしているうちに、熊手の先が何かにぶつかる感触があった。

土器かもしれない!

そう思った僕は、今まで雑に掘り起こしていた手を、ゆっくりと丁寧に、壊れ物にさわらないように、大きく掘り出すことにした。


大きな土の塊を掘り出した僕は、この中に土器があると思うと、ワクワクというより緊張が高まった。本当に僕がみつけられるのかもしれないし、これは歴史的瞬間になるかもしれない!そう思っている所に、遥斗がさらりと来て、僕の横からその塊をあっという間にみかんの皮をむくように、中身を出してしまった。


「おー!すげー!俊、これ土器じゃん?教科書でみた弥生式土器だよな。」


そう感動しながら普通に喜ぶ遥斗が、僕はちょっと宝物を横取りされた気分になった。


いくら遥斗でも、こんなずけずけ入り込むなんて、土器は僕が発見したんだぞ!

そう半分不貞腐れたような気持ちになりながら、最初のみかんの皮むきをしたかった僕は、少し複雑な気持ちになりながら初めましての土器をみつめていた。

これは どこの部分なのだろう?

本当に、本物だよね?山田先生がこっそり先に土に隠していた土器じゃないよね?


土器の発掘に成功した僕は、なんだか きつねにつままれたような気分になりながら山田先生にその土器を献上した。


「おっこれも深鉢形土器だな、さっきの土器と同じ物の一部分かもしれないぞ?」


そう先生はいうと、時間がもうないのか

「みんな、今日は帰るぞ、今日は2つの土器が発見された!教室でよく観察してみよう。」


そう先生はみんなに伝えると、土器が発見された事に感動している様子もなく、普通にしているので、余計に僕は先生が仕込んだ土器なのではないのか?と疑ってしまった。


学校に帰ると、僕は水道の水で土器を洗おうとして先生に止められた。


「河合、土器は水道でゴシゴシ洗ってはだめだよ。まず絵具の筆に水をたっぷりとつけて優しく土をはらいのけるんだ。そうして表面が傷つかないように土を落とすんだよ。」


「そっか、古い歴史が判明するかもしれない大切な土器なんだもんね。」


僕は、そう思うとこの手のひらサイズの土器が、とても大切でかけがえのない存在に感じてきた。


僕は急に手のひらの土器を特別扱いの王様のように扱い始めた。

昼休み中時間をかけて綺麗にした僕の土器は、とても綺麗な縄文土器の文様が見えてきた。


「河合、これは土器の模様をみるとわかるんけど、ふちの部分に近い絵柄だと思うぞ。」

山田先生は、そう言って僕の土器を 改めて写真におさめた。


「先生は土器に詳しいんですね。土器って発掘するのって大発見じゃないのですか?」


僕は、山田先生が土器を発掘しに行くと言った時にも、もし土器を発掘出来たら、とても凄い事で新聞に載ってしまうような事なのではないか?と思っていたくらいなのだ。


「土器は、出そうな場所に行けば見つかる事はあるんだよ、ただ年々見つかる土器の大きさは、小さくなっていて仕方ないけど淋しいと感じているよ。」


そうだったのか、僕がみつけた土器のサイズなんて、普通にみつかるサイズだったのか!新聞に載ってしまうのではないかと少しでも考えてた事が恥ずかしくなった。


でも6年1組の仲間達+6年5組の8名全員で48名で探したのに、みつけたのは2人だけだった。


これは48分の2の確率で、24分の1だ。 結構確率低いよね。


それに、潮干狩りとは違って、毎年同じサイズのアサリが採れるわけでもないからね。


土器には数に限りがあるんだ、その数少ない歴史のカケラを僕の手でみつけたんだよね。


僕は、大切にその土器をハンカチに包んで机の中にしまった。

僕は早く家に帰って、土器を”歩く電卓さん”に見せたい気持ちになった。


帰り道も、ランドセルではなくて大切にハンカチに包んでポケットに入れて大切に運んだ。


急いで家に帰っても、"歩く電卓さん"は、まだ帰宅していない。

当たり前である。


僕は、ソワソワしながら、インコさんに先に見せてしまいたい気持ちを抑えて、家の主の帰宅を待った。

















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