第19話 僕のクラスが分裂

僕の担任の先生は 新米で女性で若かった。


そして、僕のクラスは1学期が終わる頃なんと 一時終了のお知らせが届いた。

学級崩壊などではない、先生が飛んだのだ。


どういう事かというと、結婚したらしい。

先生が結婚しただけで、それだけで僕たちのクラスは終わるのか?


まるで強制終了かのように、僕たちの6年5組は2学期から分散する自体になった。

簡単に説明すると、1クラス40人いた生徒は1組から6組の5クラスに分散されたのだ。

クラス別に無差別に選ばれた8人ずつが他のクラスのお世話になる事になったのだ。


僕たちは、自分達の机を第2のクラスへ運びこんだ。一時的にお世話になるクラスなんだけど、なんだか居候みたいな気分だった。5組の全員みんな同じ気持ちだったと思う。


朝は、自分達のクラス6年5組に登校する。空っぽになった机1つない教室に入り

ロッカーにランドセルを入れて、中身の教科書だけを抜き取る。

そしてお世話になる居候先のクラスに移動するのだ。


朝だけ、元クラスメイトと「おはよう。」とあいさつをして

みんな居候先に分散するのだ。


朝の6年5組の教室の様子は とても切なかった。

女子たちの会話はこうだ

「華ちゃん、4組で優しい先生でいいな。私なんて6組のおばあちゃん先生だから怖くて。」


「そうだよね。でも阿部先生よりは 良いんじゃない?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


阿部先生、それは 僕たち6年5組の担任の先生だ。


阿部琴美先生、彼女はどこへ飛んだのかと思っていたら、

スイスへ飛んだらしい。


それは 大人の事情なのか?よくわからないんだけど、

2学期が終わって 阿部先生が5組のみんなに お土産をくれたのだ。

外国っぽい絵柄のついたチョコレートと革の小さな小銭入れだった。


そのころ、外国の名前を聞くだけで どんな所なのか想像もつかなかったけれど

スイスは新婚旅行だったらしい。


でも 阿部先生は 6年5組には戻ってこなかった。

その後、妊娠でもしたのかもしれないが、戻ってこなかった事だけははっきりと覚えている。

でも 6年5組の仲間は誰も何も言わなかった。

戻ってきては 欲しくないのかもしれない。


大人の事情があるのかもしれないけれど、僕たちは なんか阿部琴美に見捨てられたような気分になっていたからだ。


理由の1つには、2学期のはじめから僕たち6年5組の仲間たちは感じていた。

まず、授業の進め方が悪かったのか?他のクラスの子供達に比べて進み具合が遅れていたのだ。

小学校では、担任の先生がほとんどの教科を教えているので、6年5組の仲間達は

全員授業に遅れたまま新学期をスタートする事になってしまったのだ。


僕は幸い インコさんが塾の先生だったので、インコさんに教わって遅れを取り戻す事が出来た。それでも 夜遅くまで学校で教わるような事をわざわざ家でしていたのだから、本当迷惑な話だ。


その様子をみた、歩く電卓さんは眉をひそめた。そして 眼鏡の奥にある眼は やはり笑っていなかった。


阿部先生は、まだ教師になりたてだったのだと思う。でもやるべきことは しっかりやって欲しいものだ。教師って教える仕事なのに、教える事を放棄しても良いのか?



でも、阿部先生の逃避行は僕にとっては 嫌な事ばかりではなかった。


僕の居候先は 1組だったのだ!

リーダー遥斗と同じクラスだった事もあり 僕は嬉しかった!

遥斗と同じクラスって事は、一緒に体育も出来るし、一緒にふざけ合う事できそうだ。


6年5組には そういう仲間はいなかった。


それに6年1組の生徒は、僕は6年5組だった事もあり 僕を知らない子供ばかりだから

なんていうか 気分一新 自由な自分で過ごせそうな予感がした。


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