第18話 悪ガキ達の仲間入り

僕は、ジュニアサッカーチームに入れてもらえてから毎日が輝くように楽しかった。


家でも、いままで以上に練習したし、週に2回しかないチームの練習日は

とても待ち遠しかった。


そんなある日、チームの練習に3回くらい参加した頃、

休み時間には必ずリーダーの遥斗と翼が僕のいる教室に僕を誘い出しに来るようになっていた。


今日も僕は、仲間たちと一緒に休み時間、校庭でサッカーをして遊んでいた。

休み時間の終了のベルがなり、名残惜しく仲間と教室へいそいそと戻ろうと歩いて来たときに、翼がひとりボールを蹴りだした。もう昇降口近くまで来ていた僕たちだけど、サッカーの試合が始まってしまうともう誰にも止められない雰囲気になった。


僕たちは休み時間が終わっているのに、昇降口エリアでミニ試合を始めてしまったのだ。

そうこうしているうちに、教頭先生にみつかってしまい

「何してるんだ! もう休み時間は終わりだぞ!」


と注意されたのもつかの間、僕たちと戯れていたサッカーボールは

運悪く昇降口の大きなガラスにヒットしてしまい、派手な音を立てて割れてしまったのだ。


割れてしまったガラスに近づいてみてみると、透明なテープで補強してある跡があったから、きっとヒビが入っていたのかもしれない。。。

運が悪かったのかもしれないが、昇降口でミニ試合なんてしている僕たちが悪いのだ。


僕は、いろんな意味でも、遥斗や翼たちのように 先生に叱られることなんてなかったから これからどうなるのか?と想像すると、とても怖かった。


翼が口を開いた。

「大丈夫、大丈夫、こんなの 元気な証拠だよ!」


と言って 僕を励まそうとしたのか、にひひっと笑った翼は、すぐに表情が凍り付いた。

僕の背後から、教頭先生が近づいてきていたのだ。


「お前たちは、休み時間が終わっても そんな事をしていて、学校のガラスを割るなんて、ふざけてるのか!」


「すいません。ごめんなさい・・・。」


僕が、蚊のなくような声で言うと


「けが人がいなくてなにより!」


と友則が少しふざけたようにつぶやいた事により、教頭先生は沸騰したやかんのようになってしまった。


顔を真っ赤にして憤然と仁王立ちした教頭先生は、まるで仁王様のようだった。


僕たちは、全員そのまま職員室に連れていかれ、仁王様に怒られた担任の先生達は

僕たちを各クラスの廊下に立たせた。


しかも、昭和時代のような バケツに水を入れて両手に持たされたスタイルだった。


僕は、こんな事は したこともなかったので、とても新鮮に感じた。

でもそんな考えは数分で消えた。


手の平のバケツを握っている部分が 真っ赤になり痛くて耐えるのがきついのだ。

昔の人はバケツで水を汲んできたって本に書いてあるのを読んだ事があったから

昔の人って本当に大変だったんだな。尊敬するなぁ。。。とぼんやり考えたり

友は何をしているのだろう?


遥斗も翼も友則も浩司もクラスが違うため、友の様子はわからずにいた。


そうこうしているうちに日が暮れて来た。

今何時なのかも 廊下にいるから わからない。


何時間、廊下にいたのかは わからないが、

外が真っ暗になり、廊下の空気が冷蔵庫の中のような状態になった頃

歩く電卓さんとインコさんが 慌てた様子で迎えに来てくれた。


僕は どうしてこう真面目なんだろう。。。

流れはこうだ。


各先生にみんなは僕と同じようにバケツに水を汲んで立たされていた。

遥斗は1組だけど、翼と友則、浩司は2組で廊下もお隣同士なのだ。

1人と3人は、最初は大人しく廊下に立っていたけど、

すぐにお調子者の友則が自分のバケツの水を浩司のバケツにちょっとずつ入れてみたり、ふざけ合いっこになり、水を廊下にぶちまけて 2度目のお説教を受けたらしい。


そうして2度目のお説教が終わった後、もう遅いから帰りなさいと言われて、4人は一緒に夕方帰宅したそうだ。

もちろん彼らは、僕の事も気になったようだが、僕は先に帰ったと先生に言われて、素行の良い僕だけ 先に帰ったと思っていたらしい。


ただ、僕はまた幼稚園の時の誕生日の件を思い出してしまった。

僕は担任の先生に 僕を廊下に立たせた事を忘れられてしまったのだ。


僕って そんなに 存在価値がないのだろうか?


確かに 遥斗や翼みたいに 存在感は 強くないだろう。


でも 廊下に立たせたまま 先生が帰宅してしまうなんて、寂しい。


僕も遥斗や翼たちみたいに 存在感を出せばいいのだろうか?


幸い?僕は9時を過ぎたころ、用務員さんが気づいてくれて

僕の両親に電話を入れて迎えに来てもらえたようだった。


僕を迎えに来た 歩く電卓さんは 僕を心配そうに優しい瞳をしていたけれど

眼鏡の奥底の眼は笑っていなかった。


僕を本当に心配してくれていたんだね。


僕は、もっと 存在感のある子どもになる!

そして 先生に存在を忘れられる事なんて 2度とさせるもんか!


幸い僕には サッカーという夢中になれる物がある。

僕の担任の先生は、子供と向き合わないような

数字の教え方も下手な大人だった。


そんな大人に 僕は存在を忘れられてしまったのだ。


教師にはなりたくないなぁ。。。

でもコーチならなりたいかも?


ふと心に感じた。

今まで、僕は出会う先生に恵まれていなかったのかもしれない。

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