第11話 玉転がしとの出会い

僕の小学生時代は、とても物静かな本と数字とミントがお友達のような

ちょっと弱々しい男の子、という印象を持たれていたけれど


もっと社交的で活発にさせよう(子供らしくしよう)としたお父さんの目論見なのか?

ある日、僕をサッカー観戦に連れ出してくれた。


僕は、運動らしい運動は あまりしたことがなく

体育の授業では 成績は4だった。

可もなく不可もなしという 身体能力なのだろう。。。


話はそれるけど、僕の通信簿は、オール4に近い成績で

フラミンゴが沢山並んでいるかのような状態だった。

所見を除けば、”良い子”なんだと思う。


サッカーなんて、テレビでも見たこともあるし、

公園で楽しんでいる子供達を見たこともある。


でも、お父さんが僕を連れて行ってくれた観戦スタジアムは

まるで今までの世界が小さな小人部屋にいたのではないか?と感じるほど

とても臨場感が湧いて 僕の心はまるでダンスでもするかのように躍って 

ワクワクした気持ちになった。


今まで、一度もダンスもサッカーもした事はなかった。


スタジアムの中心には、とても爽快に動く選手たちが各自、機敏に動き

爽やかな汗をかいて、生きてるという証を見せびらかしていた。

黄色のユニフォームがまるで強い蜂のように見えて、とても攻撃的で強そうにも感じた。


僕は蜂の機敏な連携プレイを観て、感動し、喉がカラカラになるような緊張感みたいな感覚に陥った。


僕も蜂さんの仲間になりたい。


僕は、きっと今まで このワクワクドキドキセンサーをどこかに置いてきてしまったのではないか?

こんな楽しくて興奮する気持ちになるなら、もっと早くここに来たかったよ。

でも、ここに今日連れてきてくれたお父さんに感謝だ。


そして、試合が終わる頃には、僕は玉転がしをやってみたい!と心底本気で思った。


帰り道の電車の中では、お父さんが こう切り出してきた。

「俊、サッカーはどうだった?」


「すごくワクワクしたよ!」


「サッカーやってみたいか?」


「うん!玉転がし僕にも出来るかな?」


「玉転がしか、、、笑 俊がやりたいなら まずはボールを買いに行こうか。」


「え!いいの? ボール 欲しい!」


「本当?やったー!」


とはしゃぐ僕を見た お父さんは すごく優しそうな表情をしていた。

僕は小さい頃から、物もあまり欲しがらず、というか欲しい物が本以外

あまりなかったのだ。


僕のお父さんは、銀行員をしていて とてもお堅いイメージのする空気を出す人だった。


お父さんは眼鏡をかけていたけれど、眼鏡の奥の目が笑っていない時とか

眼鏡が 何かをカモフラージュしている時も あると僕は感じた事が何度もあった。

そして、お父さんはアリときりぎりすで言えば、アリさんだ。

マラソン大会に出場したり、コツコツ積み重ねる努力が出来る尊敬できる父親だ。

電卓を見ないで叩いたり、暗算も得意な"歩くカリキュレーター"と言われるほどの計算が得意な人だった。


お父さん、今日のサッカー観戦に連れて行ってくれて 本当にありがとう。

なんだか 帰り道の電車の中での親子の会話は、

本当の親子になれた感じがした。


なんだ? 本当の親子なのに 変だぞ。。。



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