第10話 僕のタオルケットは洗わないでくれ

僕の「第2の揺りかご」は、大切な大切な僕の宝物みたいな存在なんだ!


だから、優しく僕を毎晩包んでくれる 水色のタオルケットは 洗ったりしちゃだめなんだ。


なのに うちのインコさんは 僕が学校に行っている間に 

水色のタオルケットを洗濯機の中に入れてしまったのだ。


僕は、学校から帰って 外の物干し竿に 僕の揺りかごが干してあるのを見て

顔面蒼白になってしまった。


まるで、猫に囲まれたねずみのように 固まって動けない。

全身が 鉛のように重く動けなくなってしまった。


その数秒後、今度は 滝のように音を立てて大泣きをしてしまった。


洗濯ものを見ながら大泣きしている僕をみた インコさんは

すぐに近寄ってきて 慌てた様子だった。


「どうしたの俊、 学校で何かあったのかい?」


「あのタオルケットは、洗っちゃだめなんだよ! どうして洗ったんだよ!」


インコさんには 何の事だか わからなくて インコなのに鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべている。


それは そうだろう。。。


インコさんは


「だって ずっと洗っていないのよ? 半年以上洗っていないから 洗うのが普通なのよ。」


そう それは わかるけど 僕は 大切な青い小瓶を割ってしまって

中からスライムが出てきて、その大切なスライムは 僕を睨んでたんだよ。


だから 僕は スライムを タオルケットに合体させて 大切に 

ずっと一緒にいるつもりだったのに!


それを インコさんが 洗濯機で ぐるぐる回してしまったら

もう遅いけど、きっとスライムは 液体に掻き出されてしまって

叫び声をあげながら 排水溝に吸い込まれてしまったのだろう。。。


僕は 2層式の洗濯機を覗き込み スライムがまだいるのではないか?と

一生懸命探してみた。


でも スライムは もう 姿も形も 見つける事は出来なかった。

ただ ほんのりミントの香りだけを残して 去っていってしまったようだ。


僕は ほんのりミントの香りのする 洗濯機をいつまでも覗いていたかった。

数時間覗いていた所、夕日がだんだん沈んできたころ 何かが動いたかに感じた。

すると風が吹いて、物干し竿に干してある 抜け殻のような状態になったタオルケットが パタパタと音を立てて まるで スライムに手を振って、さよならを伝えているようだった。


僕は、第2の揺りかごを失ってしまい とても 絶望感のような気持ちになったが

半面 この別れが、僕の心を強くしてくれたような気もしてきた。



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