「力」

 わたしには特別な力があるのです。

 それは、人を魅了する力なのです。じっとその人を見るだけでわたしにメロメロになっちゃうのです。

 この力を使えば、世界征服も夢ではないのです。

「おーい!」

 遠くから男の声が聞こえてきました。

「なんだ、あなたですか」

 この男が中々曲者なのです。ジッといくら見つめても、出会った時と態度が何一つとして変化しないのです。

「ジッと俺のこと見てどうした?俺の事が好きになったか?」

 ニカっと笑う顔はなんだか腹立たしいのです。

「そんなことあるはず無いのです」

 わたしがあなたを好きになるなんてことも。そして、わたしの力が効かないなんてこともあるはず無いのです。

「なあ、今度デート行かね?」

 冗談交じり話す姿も中々腹立たしいものなのです。わたしは力が効いてくれとひたすら彼のことをジッと見つめます。

「行きたくないのです。そういうものは好きな人同士が行くものなのです」

「俺はお前のこと好きだよ?」

「……へ?」

 阿保みたいな声が出てしまいました。

「い、いつからなのですか?」

「一目見た時からずっと。一目惚れってやつ」

 最初からわたしのとこが好きだから態度が変わることが無かったのですか……。

「それで、デート行ってくれるの?」

「か、考えとくのです!」

 わたしが魅了されちゃうかもしれないのです。

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この幸福に満ちた愛すべき世界達 空白症候群 @omoitukanai

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