第56話 ダイス

「 ダイス 」


この辺で手を打つと言ったのは

誰か

その声は誰にでも聞こえる

決まって一度ではなく小さな変化の度に何処

 からともなく

聞こえる

心の奥の隅のほうに聞こえ聞きたくなくても

 聞こえ

聞こえるたびに物質として記録され

それは誰にでも平等だったがうまく聞き受け

 取れない者もいて

そういった者たちは枯れ途絶えてその骸が周

 りの者たちの糧となっていく

何故だろうか

周りの者たちの関心はずっと執拗に見つめる

 ことだった

この辺で手を打つからと言われて初めて肺と

 気管に空気が吸い込まれ打たれた手を活か

 すことができた

それは誰か強い意思の気まぐれだったのか

右にダイスがふられあるいは左にといったこ

 とだったのか

それはとても大きな問題でいまだに探究する

 者にとってはいぜん大きな問題となってい

 る

らしい

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