第7話 本能を利用した生活改善

たまに気の向いたときに読み進める本がある。「サピエンス全史」。ベストセラーなので知ってる人も多いだろう。まだ半分も読めていないが、少なからずものの見方を変えられた気がする。


とても昔、とても長い間、我々の遠い祖先は動物や魚を狩り、貝や木の実を集めて生きていた。その時間は、後に農業が起こってから現代に至るまでの時間よりも、つまり人類の歴史よりもずっと長かった。その間に、生物としての性質も狩猟採集に適したものに進化していった。


一方で、人間の社会構造、それに伴う生活様式や考え方は、農業や工業が起こるたびに激変した。だが、それはあくまでも後天的な部分の話で、DNAレベルの性質は狩猟採集生活の頃から何ら変わっていないというのだ。


言い換えるなら、生き方の変化に、体と本能が対応しきれていないということだ。もしかすると、このアンバランスが、現代社会における様々な問題の原因なのかもしれない。もしそうならば、身近な問題についても、普段の過ごし方や考え方をできるだけその頃に近づけるといいのかもしれない。


自分の目下の課題は、嫁の指令に従って、溜まった洗濯物を処理すること、そして少し離れたスーパーまで食材の買い出しに行くことだ。


まず、溜まった洗濯物を洗うのは、周囲の人間、特に女性に対して不快感を与えないためだ。なぜ不快感を与えてはならないのか。それは、子孫を残す確率を減らしかねない行為だからだ。魅力的な女性との貴重な出会いを無駄にしないよう、我々は洗濯機を回す必要があるのだ。


次に、夕飯の買い出しがおっくうな理由。これは分かりやすい。ちょっと足を伸ばせば、コンビニや飲食店で美味しい食べ物が手に入る。それどころか、気軽にデリバリーもできる現代では、生きるために食材を買い出しに行く必要などない。一方で、買い出しは狩猟採集に近い行動だ。引きこもってピザを食べるよりも、少し足を伸ばし、買い出しや釣りで食材を手に入れ、自分で調理したご飯を食べるほうが充実感は大きい。それは多分、どこかで本能を刺激しているからなのだろう。早速本能に従って、スーパーへ狩猟採集に向かいたいと思う。


その他にも、肥満と仕事のストレスは、狩猟採集からは程遠いデスクワークが主な原因だ。狩りに行く代わりにジムで体を動かせば、これらも改善されるだろう。早速来週からジムへ通おう。できれば綺麗なお姉さんがいると、更に本能が刺激されていいのだが。

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