死にたくっても腹はへる

第1話契約

　「そんなに悩むことじゃないだろ。みんなやってることだ。誰かが生きるためには誰かが犠牲にならなきゃならない。別に悪いことじゃない。仕方のないことだ。」

　その悪魔の言葉は僕の不安と焦燥を上手く捉え、今にも張り裂けそうな心の隙間を埋めるように入り込んできた。

　「本当に…彼女は助かるのか？」

　「嘘じゃないさ。俺たちは魂さえ回収できればいいんだ。上もいちいち形や色まで見ちゃいねぇよ。」

　　悪魔は一枚の紙を僕の顔の前でひらつかせながら底の見えない笑みを浮かべた。

　もし、1％でも彼女が助かる可能性があるのなら…。

　そう思い…

　僕は藁にすがってしまった。