第18話「効果万能の温泉(属性追加もあるニャン)」

「それにしてもよ。あの温泉にどんな効果があるんだ?ミナは知ってるのか?」


「ん?なんじゃ、効能のことかのう。あの温泉には凄い効果があるんじゃよ」

 ミナは指を数えながら、答えていく。

「肩こり、腰痛、筋肉痛……」


「そこまでは普通だな。一般的な温泉なのか」


「魔法抵抗力、防御力強化、呪い防止、回復向上、筋肉強化……」


「万能だな、この温泉は!」

 俺は今まで聞いたことのない効能に驚きつつも、やはり異世界の温泉は地球と違うのかと感心していた。

 するとミナは気になることを言う。

「あ、そうそう、属性追加もあるんじゃよ」


「属性追加?なんだそりゃ?」

 効能多いな、この温泉。属性追加ってなんだろう。そんな大したものでも……。

「お風呂に入ったら、いきなりパンダになったり、猫になったりするのじゃ」


「それ、ら〇まじゃねーかよ。そんな温泉は入れるか!」


「らん〇は知らんが、冗談じゃよ。そんなわけあるわけないじゃろ。あったら子猫娘やわらわはすでに変化しておる。ま、従僕のお前はロリコン性質が追加されたのじゃと思うがのう」


「おい、それは冗談だよな……、おい、冗談だと言ってくれ」

 額に脂汗がにじみ出る。知らない間にそんなことになっていたのか?俺自身信じられない。

「それは自分の胸に聞いてみるんじゃな。ははははあ、はは」

 ミナは俺の焦る反応を見るや、大声で笑いだした。俺をバカにするかのように。

 こいつ覚えてろよ。次は納豆食わしてやるからな。


 俺はミナを見つめながら、ふと思う。こいつ服とか持ってるのだろうか。今まさにタオルは身体に巻いているが、布一枚脱いだら、あられの無い姿になってしまう。

「おい、ミナ、お前って服あるのか?そんな姿だと寒いだろう」

 誰かに見られたりしたら、俺は通報モノだした。都条例にかかっちまう。

「何じゃそんな事か、わらわの服は凄いぞ」

 ミナはぱちんと親指を鳴らす。ミナの目の前に、一つのタンスが現れた。その中には女の子、言わば幼女の服装が入っていた。中には、ドレス、着物、パーカー、白鳥の首が付いたバレエ服まであった。

 ミナは「ふふん」と鼻高々に気分を上げる。

「どうじゃ、凄いじゃろう。もっと驚いてもいいんじゃよ。もっと褒めよ。崇めよ。甘やかすのじゃ」

 おかしなことを言うミナをスルーし、俺は、タンスの中に入っていたバレエ服を指でさす。

「甘やかすことはないのだけど、なんだよ、これ?どこで使うんだよ」


「忘年会の時に一度着たぐたいじゃの、なんなら石川着てみるか?魔王の加護がえられるぞ」

 俺は「いらない」とだけ言いながら、話を変える。

「それよりも早く自分の家に帰れよな。ここに居てもプリンは出てこないぞ」


「にゃーん(帰れにゃん)」

 俺が言い終わりぐらいに、ミーも声を張り上げた。


「なんじゃい、わらわをさっさと帰したいのか。あ、子猫娘まで、世知辛い世の中じゃの」

 こいつ猫の言葉が分かるのかよ。俺は愛猫がいつも通りに鳴き声を言っているしか聞こえないから、何喋ってるか分からないけどな。時折、なにを言っているのか気にはなるが。


「まあ良い、美味しいものは食べたし、ここには用はないかのう。石川、次来るときはプリンを用意しておくのじゃ。それは頼みじゃなくて命令じゃからの」

 ミナは親指で音を鳴らすと、目の前にあったタンスが消えた。

 そう言い残し、颯爽に押し入れの中、異世界の温泉に帰っていった。ミーもいつの間にかどこかへ行っている。キッチンかな?まあリビング付近には居るだろう。

 俺はうーんと背伸びをしながら、あくびをする。窓から入ってくる光に目をつぶりながら、

「少し寝るか。ここのところ寝不足だし、ふぁああああ」

 大きなあくびをしながら、机に置いてあるパソコンを一目見てから、ベットに入った。


 一目つぶった瞬間だった。俺はどれだけ寝たのだろうか。布団も掛けずにそのまま眠っていたらしい。気を失っていたに近い感覚。俺はそこまで疲労してしまっていたのだろうか。

「温泉作りをしてから、執筆もしてたら疲れるわな。気を付けないと」

 俺はため息を吐きながら、ふと身体がべとべととなっていることに気付く。

 気持ち悪いと言うか早く身体を洗いたいと思いながら、俺は首回りを手で掻いた。

「今度こそ、あの温泉に入ってくるか。邪魔をされなきゃいいんだがな」

 俺はタオルを持ち、ミネラルウォーターの入ったペットボトルを手に取ると、押し入れに入り、いつもの温泉に向かった。

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