第15話「チュールを食べさせるのじゃ!チュール、チュール!(同感なのにゃん!」

「お前、もしかしてこの前渡したミーのお菓子食べたのか?それは猫用だぞ」


「美味しかったニャン。ありがとニャン、ご主人様」

 ミィは両手をくっつけ、舌を出しながら、ウインクする。こいつふざけるなよ。ミーのお菓子、猫用のごはんを食べやがったのかよ。

 確かに、この前やったチュールはマグロ味だった。人間が食べても美味しいのかよ。そんな疑問をよそにミナが言ってくる。

「なんじゃ、チュールって?石川!わらわは食べたいぞ!早く~」

 ミナは俺の右側のズボンをゆすってくる。まるで子供が駄々っ子をこねているようだ。

「おいおい、チュールは猫用のお菓子であって……、ズボン濡れてるから、湯舟の水滴でズボンが濡れてるから」

 俺はミナに言い聞かせるように言っていたのだが、全身湯舟で濡れている身体で、俺の足に抱き着いてきた。幼女に抱き着かれてもな~。


「チュールを食べさせるのじゃ!チュール、チュール!」


「「チュール、チュール!」」

 ミナが言い出し、ミィも同時に言いだした。俺はこいつらは猫なのかよと呆れるように二人を見た。


「にゃーん」


「チュール食べたいのじゃ。チュールはよはよ渡すのじゃ!」

 ミィが俺の心を見透かしたように猫声を出す。ミナは俺が買ってきた木のすのこの上で、横になりながら駄々をこねていた。

 こいつらは子供か、いや、見た目的にも子供なのか。猫耳のミィは少女だし、魔王を名乗るミナに関しては幼女だし、そのぐらいのわがままも仕方ないのか?

 いや待て、チュールは猫用のおやつだぞ。そんなのこいつらに食わして良いわけないだろう。


 俺は手のひらを二人に見せる。首を横に振りながら、

「チュールは猫用のおやつだぞ。それより今度会った時に美味しいものを持ってきてやるから、今回は我慢してくれ」


「嫌じゃ!今すぐ食べたいのじゃ!」


「にゃーんにゃんにゃーん」

 わがまま娘達が俺に抗議するかのように声を出す。ミィに限っては何言ってんのかわかんないぞ。ちゃんと俺の分かるように言いやがれ。お前も喋れるだろうが。

「今回はなし!また持ってくるから。それじゃまたな」

 俺は二人から逃げるようにこの場から去った。ボソリと二人の声が背中越しに聞こえる。

「これだからモテないのじゃ。石川は」


「全くニャン。わがままの一つや二つ聞いてくれても良かったニャン」


「ミィって言ったか、話が分かるじゃないか」


「お前もニャン。ご主人様ってニャンだかにゃー」

 覚えてろよ。お前ら~。俺はあいつらを見ずに、背中に哀愁を漂わしながら、部屋に戻っていった。

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