第13話「わらわ、いや我が名は、ベルゼーフ・サタニキア・ミナミール。ミナ様と呼ぶのじゃ(このタイプは話を聞かないと思うだニャン)」

「貴様、まだミックスオレと言う飲み物は無いのか?無いのか?」 


「さっき飲んだのが最後だよ。買ってこないと今は無いよ」


「ぐぬぬ……、そうじゃ、わらわ、いや我が名は、ベルゼーフ・サタニキア・ミナミール。ミナ様と呼ぶといいのじゃ!」

 何を思い立ったのか、突然、幼女は自分の名前を言ってきた。

 鋭い目つきから見せるニコリとした笑みはなんだか怖い。このべるぜー……、ミナという幼女、本当に悪役令嬢みたいなキャラだな。様をつけろとか本当に性格が物語ってるぜ。こいつは将来、悪役令嬢になると思う。俺が保証してやるよ。


 俺がそんなことを思っていると、ミナはドヤ顔で顔を上げて、わきわきと言う。

「今日からわらわのしもべ、下僕にしてやるのじゃ。感謝してくれてもいいのじゃよ。我が魔王軍、その長の舎弟になったのだ。光栄に思うがいいわ」


「なんで舎弟なんだよ。下僕ってならないぞ。そんな訳の分からないものを」


「な、なんじゃ下僕では足りないと言うの?仕方がないわ。それじゃ幹部候補でどうじゃい?それで手を打とうじゃないか」


「なんで下っ端なんだよ。っていうか中二病に付き合ってられるかよ」


「な、なんでじゃ、わらわの仲間には加わってくれないのか。もうミックスオレは飲めないのかのぉ」

 自称魔王と名乗っている幼女、ミナはウルウルと涙目になりながら、口から八重歯をちらりと見せ、上目遣いで俺の顔を見てくる。そして顔をうつむかせた。

 そんな幼女の姿を見た俺は「はー」と深いため息を吐いたのち、

「しょうがないなぁ。ミックスオレならまた買ってきてやるからそれで我慢しろ」

 俺はミナの頭を撫でてやった。すると俺の言葉を聞いていたのか、うつむいていたミナの顔が、次第と明るい顔になっていく。

「やったのじゃ。わらわの僕、下僕が出来たわ!わーいわーい」


「下僕じゃないから、そんなの一言も言ってないから」

 慌てて訂正するが、俺の話を聞いていないミナ。ぽんと俺の肩が軽く叩かれた。

「言っても無駄ニャン。このタイプは話を聞かないタイプだニャン」

 ミィは首を横に振りながら、哀れむような目で俺を見てくる。そんな目で見るな。俺自身哀しくなってくる。

「そうじゃ、貴様、いやお前の名前はなんていうのじゃ?わらわだけ言ったんじゃ不公平じゃないか。さっさと教えるのじゃ」


「石川、石川って言うよ。それがどうした?」

 俺はしゃがみ、ミナの目線に合わせながら言う。ニマニマしながら笑みを見せるミナは、

「石川か、石川じゃの。それじゃ契約じゃからな。新たな下僕、石川よ」

 そう言いきると、俺の唇に向かって、チュッとキスをしてきた。突然起きたサプライズ。俺の初キッスは突然現れた幼女に純白は奪われたようだ。

 俺は温泉に浸かりに来たつもりが、キスをされ、中二病の下僕になってしまったらしい。本当に悪役令嬢みたいな幼女だった。

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