第12話「温泉からのミックスオレは至福(今回は暇だニャン)」

 勇者って、ここはラノベ世界の異世界かよ!と心の中でツッコミを入れたのだが、俺はふとここは異世界だったことを思い出す。そうか、ここは魔王討伐する世界なのだろうか。

「というかお前は誰だよ?幼女ならば近くに母親でも居るのか?それとも迷子にでもなったのかよ?」

 俺は幼女に目を合わせるために、足をしゃがみ、金髪の団子ヘアーの幼女に目を見ながら言う。


 幼女はピクリとまゆを上に動かした。ふうとため息を吐いたあと、口を開く。

「なんじゃ、わらわは魔王様であるぞ。が高い!殺されたいのか人間風情が。わらわはここの温泉に用があるんじゃ。邪魔するでないわ」


 なんだこいつ、魔王様とかそんな事言ってなかったか?とっても胡散臭い。魔王って最強の敵、最後のボス的な存在じゃないのかよ。パッと見、一般人の幼女にしか見えない。

「なんだ中二病者かよ。幼女のくせにこじらせると後々大変だぞ」

 俺の言葉に幼女はピクリと反応した。全裸ながら腕組をしながら俺を睨みつける。

「中二病じゃないわい!わらわ、いや我こそは魔王。この異世界を掌握しょうあくしていた魔王様じゃぞ」

 していたって過去形かよ。それにしてもただの幼女で耳が人間よりもとんがっていること以外、普通の幼女でしか見えない。

「はいはい。魔王様ね。それより風邪ひくから早くタオル巻けよ」

 俺は目の前にいる幼女にタオルを渡すが、その幼女は顔をプイっと腕組しながら反対方向に向けると、頬を膨らませていた。


「さすがご主人様だニャン。こんなにも早々に解決するだニャンて、頼りになるだニャン」

「え?そうかな?ただの幼女だし、子供の喧嘩だと思えばすぐだろう。いて、何をする」

「わら、我は子供ではないぞ。魔王様じゃ。訂正しろ、訂正!」

 魔王を名乗る幼女は、子ども扱いが気にくわないようだったのか、俺が言いかけるまでに、ポカポカと小さな手でお腹周りを叩いてきた。

 やはり子供だ、ダメージは感じられない。まあ確かに、顔は整っていながらも目つきは鋭く、悪役令嬢みたいな顔になりそうでもある。恋愛ラブコメであるライバル役ってところか。


 俺は息を吐く。手に持っていたミックスオレをその幼女に手渡した。幼女は顔を上にあげて俺の顔を見る。

「なんじゃこれは?毒か?」

「失礼な。ミックスオレだよ。美味しいぜ。味は保証するから飲んでみろよ」

 幼女はふん、と口で言いながら、俺が渡したミックスオレを返してきた。

「毒見するのじゃ。貴様が何もなかったら飲んでやるわ」

 こいつ~。失礼な奴め。まあ仕方ないか。知らないやつからもらったものなど飲めるはずがないしな。こいつの方が幼女ながら危機管理は出来ているのかもな。

「ああ、飲んでやるよ。一口目の一番美味しいんだよな~。いただきます」

 ゴクゴクと俺は幼女の目の前で飲んでやった。その幼女はゴクリと喉を鳴らす。そして、俺はその幼女に毒見をしたミックスオレを手渡した。手渡されたミックスオレを初めは匂いを嗅いだり色を見たりしていたが、ゴクリと一口。


「ぱ、ぱないの。なんじゃこの飲み物は!お、美味しいじゃないか」

ゴクリと一気に飲み干すと、物欲しそうに俺のズボンに抱き着いてきた。

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